特定保険医療材料の償還価格と病院収支への影響
2026.06.25医療経営
医療材料の価格上昇は、病院経営に継続的な影響を及ぼします。
中でも特定保険医療材料は、公定された償還価格と実際の購入価格が異なるため、価格差の管理が必要です。
制度の仕組みを理解せずに運用すると、請求漏れや逆ザヤ(購入価格が償還価格を上回る状態)を見落とす可能性があります。
本記事では、特定保険医療材料の価格決定の仕組みと、病院収支への影響について解説します。
特定保険医療材料の概要

特定保険医療材料は、保険医療機関などで使用する医療材料のうち、技術料とは別に償還価格が設定された材料です。
すべての医療材料を個別に請求できるわけではないため、制度上の位置づけを区別する必要があります。
医療材料のなかでの位置づけ
医療材料には処置や手術の技術料へ包括されるものと、材料価格を別に算定できるものがあります。
特定保険医療材料は後者に該当し、材料価格基準に収載された機能区分ごとに基準材料価格が定められます。
カテーテルや人工関節など、診療に用いる様々な材料が対象です。
保険診療で使用される材料との関係
保険診療で使われる材料のすべてが、特定保険医療材料に該当するわけではありません。
個別に算定するには、材料価格基準への収載に加え、診療報酬上の算定要件を満たす必要があります。
そのため、採用品と機能区分、材料コードを対応させる管理が求められます。
参考ページ:厚生労働省ホームページ「特定保険医療材料及びその材料価格(材料価格基準)」
償還価格とは何か
償還価格とは、特定保険医療材料を使用した際に、医療機関が保険診療として請求する公定価格です。
ここでは、保険請求上の役割と診療報酬との関係を整理します。
保険請求上の価格としての役割
償還価格は患者や保険者へ請求する材料価格の基準となり、価格は製品の希望小売価格ではなく厚生労働大臣が告示する材料価格基準に基づきます。
同じ機能区分に属する製品は、原則として共通の基準材料価格で算定される仕組みです。
医療機関が受け取る診療報酬との関係
医療機関が受け取る診療報酬は、診察や手術などの技術料に、算定可能な材料価格などを加えて構成されます。
購入価格は卸業者との取引条件や価格交渉により決まるため、購入価格が償還価格よりも高くなると逆ザヤとなり、材料を使用するほど収支を圧迫します。
たとえば、償還価格が10,000円の材料を1件あたり12,000円で購入している場合、使用するたびに2,000円の差損が生じます。
仮に年間1,000件使用すれば、単純計算で年間200万円の収支悪化につながり、使用量の多い材料ほど影響は大きくなります。
償還価格の基本構造
償還価格の基礎となる基準材料価格は、製品ごとではなく、原則として機能区分ごとに設定されます。
以下にて、償還価格の考え方、機能区分、算定基準について解説します。
償還価格の考え方
基準材料価格は、特定保険医療材料の保険償還価格として定められる価格です。
既存材料は厚生労働省が実施する材料価格調査の結果を基礎として、定期的に価格が見直されます。
これにより、市場での購入実態を公定価格へ反映する仕組みが設けられています。
機能区分との関係
機能区分は、構造や使用目的、医療上の効能・効果などが類似する材料をまとめた区分です。
同じ区分には複数の製品が含まれる場合があり、原則として同一の基準材料価格が適用されます。
ただし、製品ごとの購入価格は異なるため、区分全体だけでなく製品別の分析も必要です。
裏を返せば、同一の機能区分であれば製品が異なっても償還価格は変わりません。
そのため、診療上の同等性を確認したうえで、同じ機能区分内のより購入価格の低い製品へ切り替えれば、診療報酬上の収入を維持したまま材料費を抑えられる場合があります。
同種同効品の比較や、他施設の購入価格とのベンチマークは、その判断材料として非常に有効です。
材料価格の算定基準
新規材料の価格は、類似機能区分比較方式または原価計算方式を基本として算定されます。
有効性や安全性などについて所定の要件を満たす場合は、画期性加算や有用性加算、改良加算などの対象になります。
材料価格が決まる主な要素
材料価格の算定では、類似する既存材料の価格、外国価格、新規性や有用性などが評価されます。
ここでは、材料価格を左右する主な要素を整理します。
類似機能区分との比較
新規材料に類似する既存機能区分がある場合は、その基準材料価格を基礎として算定します。
既存材料より高い有効性や安全性、操作性などが客観的に示されれば、補正加算が適用される場合があります。
一方、類似する区分がない材料には、原価計算方式が用いられます。
外国価格との調整
外国価格が確認できる場合は、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、オーストラリアなどの価格が参照されます。
国内で算定した価格が外国平均価格を一定程度上回る場合は、外国平均価格に一定の上限倍率を乗じた水準まで引き下げられます。
内外価格差を抑え、保険財源との均衡を図るための仕組みです。
新規材料と既存材料の違い
新規材料は、保険適用時に既存の機能区分への該当性が判断され、必要に応じて新たな機能区分と基準材料価格が設定されます。
既存材料は、材料価格調査で把握した市場実勢価格を基礎として、改定時に価格が見直されます。
ただし、安定供給や医療上の必要性を踏まえ、特例や再算定が適用される場合もあります。
参考ページ:厚生労働省ホームページ「特定保険医療材料の保険償還価格算定の基準について」
診療報酬改定で確認すべき点

診療報酬改定では、償還価格の増減だけでなく、機能区分の定義や算定要件も確認する必要があります。
以下にて、償還価格と機能区分の確認事項について解説します。
償還価格改定の確認
改定前後の価格表を比較し、使用量や購入金額が大きい材料から影響額を試算します。
さらに、購入価格と償還価格の差、診療科別の使用数量、請求実績を確認することが有効です。
具体的には、材料ごとに「(改定後の償還価格-改定前の償還価格)×年間使用数量」で増減額を概算し、影響額の大きい品目から優先的に対応方針を検討すると効率的です。
あわせて、改定によって購入価格と償還価格の差が縮小し、新たに逆ザヤへ転じる材料がないかを確認しておくと、収支の悪化を未然に防ぎやすくなります。
機能区分変更の確認
機能区分の新設や統合、定義変更がある場合は、採用品の該当区分を再確認します。
また、材料コードや算定要件を医事部門、用度・調達部門、診療部門で共有する必要があります。
特定保険医療材料マスタの新旧対比表は、当社のベンチマークシステムからも確認できますので、ぜひご活用ください。
おわりに
本記事では、特定保険医療材料の償還価格と病院収支への影響について解説しました。
特定保険医療材料は、技術料とは別に償還価格が設定され、機能区分ごとに公定価格が定められています。
実際の購入価格が償還価格を上回ると逆ザヤが生じ、病院収支を圧迫するため、採用品・材料コード・算定要件の適切な管理が重要です。
診療報酬改定時には、価格の増減だけでなく、機能区分の新設・統合や定義変更も確認し、医事・調達・診療部門で共有する必要があります。
こうした確認は一度きりで終わるものではなく、診療報酬改定のたびに継続的に行うことが重要です。
自院だけで購入価格の妥当性を判断することが難しい場合は、他施設の購入価格と比較できるベンチマークの活用や、適時適切なマスタメンテナンスの実施、医療材料費の適正化に詳しい外部パートナーへの相談も、有効な選択肢となります。
MRP医療コラム編集部
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