病院経営におけるキャッシュフロー管理|資金繰り改善の実務

2026.07.22医療経営

病院経営におけるキャッシュフロー管理病院経営では、損益上の利益だけでなく、手元資金の動きを把握することが重要です。

診療報酬の入金時期、設備投資、借入返済、診療材料の在庫管理によって、資金繰りは大きく変動します。

本記事では、病院経営におけるキャッシュフロー管理と資金繰り改善の実務について解説します。

 

病院のキャッシュフローとは

病院のキャッシュフローとは、一定期間における現金の流入と流出を示す考え方です。

損益計算書では利益が出ていても、入金より先に支払いが発生すれば、手元資金は不足します。

また、医療機関では診療報酬の入金まで時間差が生じるため、帳簿上の収益と実際の現金残高が一致しない場合があります。

そのため、病院経営では利益だけでなく、支払いに必要な資金を確保できているかを確認する必要があります。

 

キャッシュフローの3区分

キャッシュフローの3区分

キャッシュフローは、営業活動、投資活動、財務活動の3区分で整理します。これは病院会計準則でも財務諸表の一つとされるキャッシュ・フロー計算書と同じ区分であり、資金の流れを共通の枠組みで捉えられます。

以下にて、キャッシュフローの3区分について解説します。

 

営業活動による資金

営業活動による資金は病院の本業から生じる現金の動きであり、診療報酬や窓口収入、人件費、医薬品費、診療材料費などが関係します。

この区分が継続してマイナスになる場合、本業で資金を生み出せていない状態といえます。

そのため、収益構造や費用構造を確認し、診療科別や部門別の改善点を把握する必要があります。

なお、減価償却費は費用として利益を圧縮しますが、実際の現金支出を伴いません。そのため、簡易的には「税引後利益+減価償却費」で本業の資金創出力の目安をつかめます。利益が小さくても営業活動による資金が確保できているかを、あわせて確認するとよいでしょう。

 

投資活動による資金

投資活動による資金は、医療機器、建物、システムなどへの投資に関する現金の動きです。

病院では高額な設備投資が必要になる場面がある一方で、投資回収の見通しが曖昧なまま支出すると、資金繰りを圧迫します。

そのため、導入効果、稼働率、保守費、減価償却費を含めて判断することが求められます。

 

財務活動による資金

財務活動による資金は、借入や返済などの資金調達に関する現金の動きです。

借入によって一時的に資金は増えますが、返済負担は将来のキャッシュフローに影響します。

また、既存借入の返済額が営業活動による資金を上回ると、追加借入に依存しやすくなります。

 

資金繰りが悪化する要因

病院の資金繰りが悪化する要因は、収益不足だけではありません。

こちらでは、資金繰りが悪化する要因をご紹介します。

 

診療報酬と未収金

医療機関では、診療を行った時点と入金される時点に差があります。

具体的には、ある月の診療分は翌月10日までにレセプトを審査支払機関へ提出し、入金はおおむね診療月の約2か月後(翌々月)になります。この間の人件費や仕入れの支払いをまかなう運転資金が欠かせません。

さらに、提出したレセプトに不備があると、返戻(差し戻し)による再請求や査定(減額)が生じ、入金の遅れや目減りにつながります。返戻・査定の傾向を把握し、再請求を確実に行うことも資金繰りの安定に役立ちます。

そのため、診療実績が増えていても、支払いが先行すれば一時的に資金が不足します。

また、窓口未収金や請求漏れが発生すると、本来入るはずの資金が回収できません。

資金繰りを安定させるには、請求状況と回収状況を継続的に確認する必要があります。

 

設備投資と借入返済

医療機器やシステムへの投資は診療体制を強化するための重要な要素の一部ですが、投資額が大きい場合は、借入返済やリース料が長期的な負担になります。

想定した稼働率や収益改善が得られない場合、資金繰りへの影響が大きくなります。

そのため、投資判断では導入目的だけでなく、回収見込みと資金余力を検証します。

 

診療材料の過剰在庫

診療材料や医薬品の在庫が過剰になると、資金が在庫として固定化されます。

また、使用期限切れや規格変更によって廃棄が発生すれば、コスト増にもつながります。

そのため、使用実績、購入単価、保管量を確認し、在庫管理を標準化することが必要です。

 

キャッシュフローの改善策

キャッシュフローの改善策

キャッシュフロー改善は資金繰り表の更新や診療材料費の適正化、請求漏れ防止、投資判断の精度向上を組み合わせることで、経営改善につなげやすくなります。

以下にて、キャッシュフローの改善策について解説します。

 

資金繰り表を更新する

資金繰り表は入金予定と支払予定を時系列で把握するための資料であり、月次だけでなく、賞与や借入返済、設備更新などの支出予定も反映します。

また、実績と予測の差を確認することで、資金不足の兆候を早期に把握できます。

経営層と事務部門で同じ資料を確認すれば、投資や支払いの優先順位を判断しやすくなります。

あわせて、突発的な支出や入金の遅れに備え、一定期間の支払いをまかなえる手元資金(手元流動性)をどの程度確保しておくかを、自院の支出規模に照らして決めておくと安心です。

 

診療材料費を適正化する

診療材料費の適正化は、病院のキャッシュフロー改善に直結します。

購入単価や使用量、在庫量を診療科別に可視化すると、過剰発注や高止まりしている材料を把握できます。

また、同等品の比較や契約条件の見直しにより、品質を維持しながらコスト削減を進められます。

 

請求漏れと未収金を防ぐ

請求漏れや未収金は、収益機会の損失であり、資金繰りにも影響します。

特に、診療材料や加算項目は、運用ルールが曖昧だと確認漏れが起こりやすくなります。

そのため、医事課と診療部門で算定要件を確認し、定期的な点検を行う必要があります。

 

投資判断を事前検証する

設備投資やシステム導入では、導入効果を事前に検証します。

投資額だけで判断せず、稼働率、保守費、人件費への影響、収益改善効果を確認しましょう。

また、投資後のキャッシュフローを試算し、返済や固定費の負担に耐えられるかを見極めます。

外部の分析支援を活用することで、判断の精度を高めやすくなります。

 

おわりに

本記事では、病院経営におけるキャッシュフロー管理と資金繰り改善の実務について解説しました。

病院では、収益が発生していても、入金時期や支払時期のずれによって資金繰りが悪化する場合があります。

そのため、営業活動、投資活動、財務活動の3区分を確認し、資金の流れを可視化することが重要です。

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タグ : コスト削減 経営戦略
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MRP医療コラム編集部

病院経営改善・コスト削減コンサルティングの株式会社エム・アール・ピーが発信する「MRP医療コラム」です。医療経営に関する様々なお役立ち情報を発信します。