診療報酬とは?医療機関に支払われる仕組みと経営への影響を解説
2024.12.24医療経営患者さんは医療機関で診療・治療を受ける際、医療保険に加入していることで自己負担額を原則3割に抑制することができます。
医療機関では収入に関しては「診療報酬」が制定されており、この診療報酬によって医療機関の収入の大部分が占められているといえます。
本記事では、診療報酬とはどのようなものなのかについて、医療機関に支払われる仕組みと経営への影響とあわせて解説します。
診療報酬とは?
診療報酬は医療機関の収入を確保するために、診療や治療などの医療行為に対して医療保険者や患者さんから支払われる報酬を指します。
厚生労働省によって公的医療保険の対象となる医療行為の点数が決められています。
1点あたり10円として計算され、個別の診療報酬算定にあたっては配置人数や体制などの施設基準を満たさなければなりません。
患者さんの自己負担の割合は年齢や所得などによって変動しますが、1割から3割の自己負担額を窓口で支払うことになります。
医療機関は本来の点数から自己負担額を差し引き、残りの金額を医療保険者から受け取るのです。
診療報酬は技術やサービスの評価である、医科診療報酬・歯科診療報酬・調剤報酬・物の評価である薬価・材料価格に分けられます。
診療報酬が医療機関に支払われる仕組み
診療報酬が支払われるまでの流れは、厚生労働省によって下記のように明記されています。
- 患者さんが医療保険料を支払う
- 医療機関が患者さんに診療・治療などの医療サービスを提供する
- 患者さんが医療機関に1~3割程度の負担金を支払う
- 医療機関が審査支払機関に診療報酬を請求する
- 審査支払機関が医療保険者に審査済みの請求書を送付する
- 審査を通過したあと、医療保険者が審査支払機関に請求金額を支払う
- 審査支払機関が、医療保険者から受け取った請求金額を医療機関に支払う
診療報酬は出来高払い方式や包括払い方式が採用されており、医療行為ごとに詳細な点数が決められています。
また、制度の性質上、保険対象外の医療行為については診療報酬の対象にはならず、患者さんが全額負担しなければなりません。
逆に保険対象の医療行為であれば、あらかじめ患者さんが支払った保険料から賄われており、患者さんは費用を抑えて医療サービスを受けられるのです。
上記より、診療報酬制度は患者さん・医療機関、審査支払機関・医療保険者が支え合うことで成り立つ制度といえます。
参考ページ:厚生労働省ホームページ「診療報酬制度について」
診療報酬の点数と計算方法
診療報酬は、「点数 × 10円」で算出でき、この算出方法は全国一律です。
点数については厚生労働省のホームページ「診療報酬情報提供サービス」に記載されています。
たとえば、初診料が300点だった場合、医療行為に対する価格は「300点 × 10円 = 3,000円」となります。
点数については2年に1度程度のペースで、「診療報酬改定」にて定期的に見直されています。
令和6年度の改定では、初診料・再診料・入院基本料のほか、入院時の食事医療費が引き上げられました。
診療報酬は医療機関に支払われるため、医師だけではなく看護師や医療事務の給与アップにもつながるのです。
診療報酬改定:2年ごとに施行される仕組み
診療報酬改定は国の審議会が策定した基本方針に基づき、中医協(中央社会保険医療協議会)が審議のうえ決定します。
中医協は診療側委員・支払側委員・公益委員の三者で構成されており、厚生労働大臣からの質疑応答を行います。
検討材料としては病院経営の収支や医業経営指標、賃金指数や物価指数などであることから、経営に関する情報も参照します。
これまでの推移から、医科診療報酬・歯科診療報酬・調剤報酬は原則2年に1回、薬価は1年に1回の頻度で改定されています。
当社コラムページ:2024年の診療報酬改定では何が変わる?目的や変更点について解説
当社コラムページ:【2024年診療報酬改定の最新情報】特定保険医療材料の償還価格改定について分かりやすく解説!
診療報酬が医療機関に与える影響と重要性
結論として、診療報酬は医療機関の収入に直結する要素のため、経営において非常に重要となるものです。
医療機関はこれらの診療報酬による収入を、人件費や光熱費、薬剤の購入などに充当します。
適切な診療報酬を得られなかった場合は収入を圧迫してしまうため、赤字経営に陥ってしまう可能性があります。
長期的に患者さんの治療に貢献するために、医療機関にとって診療報酬はなくてはならないものなのです。
当社コラムページ:病院経営が赤字になるのはなぜ?赤字要因と黒字化させる対策を解説!
おわりに
本記事では、診療報酬とはどのようなものなのかについて解説しました。
診療報酬は医療機関の収入を確保するために、診療や治療などの医療行為に対して医療保険者から支払われる報酬を指します。
医療機関が審査支払機関に請求し、了承を得たら医療保険者から支払が行われる、というのが大まかな流れです。
診療報酬は、「点数 × 10円」で算出できますが、2年ごとに診療報酬改定によって点数が変動します。
最適かつ安定した病院経営を実践するために、診療報酬改定の動向は必ずチェックし、請求漏れがないか常に確認しましょう。
MRP医療コラム編集部
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