医療DXを支える仕組みである「共通算定モジュール」について
2025.04.17医療経営近年、医療分野ではデジタル技術を活用した「医療DX(デジタルトランスフォーメーション)」の推進が加速しています。
医療に関する業務のなかでも、医療機関の診療報酬算定は多くの時間と労力を要する業務です。
負担が大きい診療報酬算定業務を改善するために導入が検討されているのが「共通算定モジュール」です。
本記事では、医療DXを支える仕組みである「共通算定モジュール」について解説します。
共通算定モジュールについて
共通算定モジュールとは、診療報酬の算定業務を効率化・標準化するための仕組みです。
これにより、各医療機関での算定業務が統一され、手作業による誤りの削減や業務負担の軽減が期待されます。
日本の医療制度において、診療報酬の算定は容易ではなく、専門的かつ正しい知識や情報が必要となります。
診療内容に応じた点数の適用、施設基準、患者の保険情報など、さまざまな要素を考慮しなければなりません。
そのため、各医療機関では独自の算定システムを構築し、対応しているのが現状です。
しかし、これでは医療機関ごとに異なる基準で運用されることになり、診療報酬改定時の対応負担や、誤算定のリスクが高まります。
こうした課題を解決するため、共通算定モジュールの導入が求められています。
導入の背景と必要性
厚生労働省は、医療DXの推進を通じて、医療機関の業務効率化やデータ活用の促進を目指しています。
その一環として、診療報酬の算定業務におけるデジタル化が重要視されており、共通算定モジュールの導入が検討されているのです。
特に、診療報酬改定のたびに各医療機関が独自にシステム対応を行う必要があることが課題として挙げられていました。
改定内容の反映には時間とコストがかかり、対応の遅れによって不適切な診療報酬の請求が発生する可能性もあります。
共通算定モジュールを導入することで全国の医療機関が一貫した算定基準のもとで業務を行えるようになることが期待されています。
その結果、改定時の混乱を防ぐことが可能になり、診療報酬算定業務の負担軽減につながると考えられます。
共通算定モジュールの構成要素
こちらでは、共通算定モジュールの構成要素をご紹介します。
共通算定マスタの役割
共通算定マスタは、診療報酬の算定に必要な基準やルールを一元的に管理・提供する仕組みです。
これにより、全国の医療機関が同じ基準で診療報酬を算定できるようになります。
現在、多くの医療機関では独自のマスタを使用しており、診療報酬改定ごとに更新作業が必要です。
しかし、共通算定マスタが導入されれば、改定時の更新作業を最小限に抑えられ、誤算定のリスクも軽減できます。
計算ロジックとデータ標準化の重要性
診療報酬の計算は複雑なルールに基づいており、各医療機関が独自のシステムで対応しているのが現状です。
共通算定モジュールでは、この計算ロジックを統一し、データ標準化を進めることで、全国の医療機関が同じ基準で算定できるようになります。
また、データ標準化により、異なる医療機関間でのデータ交換が容易になり、全国的な医療データの活用促進にもつながります。
提供基盤(クラウド)の利点
共通算定モジュールは、クラウド基盤を活用することが想定されています。
クラウドを利用することで、以下のようなメリットが得られます。
- システムの自動アップデートにより、診療報酬改定時の対応が迅速化
- 各医療機関が独自にシステムを管理する必要がなく、コスト削減が可能
- セキュリティ対策の強化
共通算定モジュール導入のメリットと課題
下記にて、共通算定モジュールを導入することで得られるメリットと、導入時の課題について解説します。
導入のメリット
医療機関が共通算定モジュールを導入することで、以下のようなメリットを得られます。
- 手作業の負担が減り、事務作業の時間短縮につながって算定業務の効率化を実現できる
- 統一された基準で算定できるため、誤算定のリスクが軽減されて正確性が向上する
- システムが自動的に更新されるため、診療報酬改定による変更作業の影響を最小限に抑えられる
課題と今後の展望
一方で、導入にあたってはいくつかの課題も指摘されています。
- 導入時に初期費用や運用コストが発生する
- 新しいシステムに適応するために、スタッフの研修が必要となる
- 既存の電子カルテや会計システムとの統合が必要
特に中小規模の医療機関ではリソース不足が懸念されるため、政府による支援体制の整備が求められています。
おわりに
本記事では、医療DXを支える仕組みである「共通算定モジュール」について解説しました。
共通算定モジュールとは、診療報酬の算定業務を効率化・標準化するための仕組みです。
導入することで業務の効率化や正確性の向上、改定時に発生する変更作業の影響を最小限に抑えられるなどのメリットがあります。
一方、導入・運用コストやスタッフの研修、既存システムとの統合といった課題も残されています。
健全な運営のためには診療報酬算定に限らず、業務を見直して改善案を立案・実施し、常に業務環境を良くする努力が必要です。

MRP医療コラム編集部

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