迫る「2025年問題」について|医療業界に及ぼす影響と対策

2024.10.08医療経営

迫る2025年問題について

医療の現場では日々多くの患者さんを対象として、医師や看護師が診療やリハビリなどさまざまな業務に臨みます。

しかし、深刻な課題として挙げられる社会における高齢化人口の増加に伴い、高齢な患者さんの増加という問題が発生しています。

特に、人口の約30%が65歳以上となる「2025年問題」は、医療業界だけではなく日本全体としても大きな課題として挙げられます。

本記事では、2025年問題について、医療業界に及ぼす影響と対策について解説します。

 

2025年問題とは

2025年問題とは、団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となり、医療や介護などの社会保障費の増大が懸念される問題です。2025年には、団塊の世代が約2,200万人を超えると予想されており、国民の4人に1人が75歳以上という、超高齢社会に突入します。

また、労働者の数が減少することによって、医療費や介護費の増大のほか、社会保障制度の持続可能性の確保などが問題となります。

経済産業省の発表によると、2011年の国民医療費が39兆円程度とのことでした。

しかし、2025年になると60兆円にものぼると予測しています。

これらは国民の税金からまかなわれていますが、2025年では就労者が減少しているにも関わらず、金額が増加傾向です。

つまり、就労者ひとりあたりの負担が大きくなってしまうのです。

医療従事者についても同様であり、人手不足にも関わらず患者さんの増加が大きな懸念となっています。

 

2040年にはさらなる深刻化が予想される

さらに、2025年問題の先に訪れるのが、「2040年問題」です。

2040年問題とは、現役世代の急減により、介護・福祉における人手不足、社会保障費のさらなる増大が懸念されているの問題です。2040年に日本の人口は約1億1000万人となり、「1人の高齢者を1.5人の現役世代で支える」かたちとなります。

 

2040年問題による人口構成の変化により、医療や介護、年金といった社会保険やインフラの維持が困難になると推測されます。

 

2025年問題がおよぼす医療・介護業界への影響

医療・介護業界への影響

こちらでは、2025年問題がおよぼす医療・介護業界への影響をご説明します。

 

医療従事者と患者さんのバランスが崩壊

高齢者が増加することによって医療を求める高齢患者さんが増加する可能性が高い一方、医療従事者など就労者が減少します。

そのため、医療従事者に対する患者さんの数が増加することにより、需要と供給のバランスが崩壊する可能性があります。

バランスが崩壊するとこれまで以上に多くの患者さんに対応しなければならず、長時間労働を要求されるため、医療の質が低下する可能性が高くなるのです。

 

社会保障・年金

就労者が減少し、高齢者が増加する2025年問題では、就労者ひとりあたりの負担が大きくなります。

就労者の負担を減らすために、年金の支給額減少や支給開始日の引き上げといった施策を行わなければならない可能性があるのです。

医療の現場においては人材確保と環境整備が不可欠であり、円滑に進めるためには社会保障と年金も考慮しなければなりません。

 

医療や介護のニーズが高まる

高齢者の増加は、医療や介護のニーズが高まるということになります。

しかし、先述の通り2025年には医療従事者と患者さんに関する需要過多となり、供給のバランスが崩れてしまう懸念があるのです。

特に、認知症や寝たきりの高齢者に対しては負担に感じる医療従事者や家族が多いため、それらへの対応も急務となります。

 

2025年問題に向けた国の対策

日本では、2025年問題に向けて下記のような対策を打ち出しています。

 

公費負担の見直し

2022年以降、75歳以上であっても一定以上の収入がある場合は医療費の負担額を2割にするなどの施策になります。

若い世代や就労者などの負担を減らし、公平化を図るための見直しが行われました。

 

医療従事者の確保

医療の現場は慢性的に人材不足に陥りがちな職場であり、人材確保は常に付きまとう課題といえます。

そのため、医療従事者や介護人材などに対して基本的な賃金アップや育成環境の整備など、さまざまな対策に取り組んでいます。

 

地域包括ケアシステムの構築

地域包括ケアシステムとは、医療や介護などの専門職から地域住民一人ひとりまで、さまざまな人たちが協力し合うシステムです。

医療従事者が不足しているからこそ、地域住民同士が助け合いましょう、といった考えのもと提唱されました。

 

医療機関に求められる2025年問題の対策

2025年問題の対策

医療機関には、2025年問題に備えて下記のような対策が求められています。

  • 生産性の向上
  • 医療従事者・介護人材の確保

 

人材確保のためには労働環境などさまざまな条件を改善する必要があり、国や地域との連携が不可欠です。

労働環境改善のための手段として、手作業を減らすなど生産性の向上が挙げられます。

生産性が向上することによって医療従事者や介護人材の負担が減少し、多くの患者さんに質が高いサービスを提供できます。

医療の現場がパンクしないように、未着手の医療機関があれば今のうちに対策を実施しておきましょう。

 

おわりに

本記事では、2025年問題や2040年問題がおよぼす影響や対策について解説しました。

2025年問題は2025年に人口の約30%が65歳以上となり、高齢化がさらに進むことにより発生する問題です。

医療従事者と患者さんのバランスが崩壊する、社会保障・年金が調整される、医療や介護のニーズが高まるなどの問題が含まれます。

日本国の対策としては公費負担の見直しや医療従事者の確保、地域包括ケアシステムの構築を挙げています。

現場負担を軽減しつつ、質の高い医療を提供するために生産性の向上や医療従事者・介護人材の確保を行っておきましょう。

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MRP医療コラム編集部

病院経営改善・コスト削減コンサルティングの株式会社エム・アール・ピーが発信する「MRP医療コラム」です。医療経営に関する様々なお役立ち情報を発信します。