診療報酬改定2026年版|2024年との違いと押さえたいポイント

2025.11.11医療経営

診療報酬改定2026年版

2026年度の診療報酬改定は、医療提供体制の再構築を促す大きな転換点となります。

医療DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進や人材確保、薬価・材料価格の適正化など、病院経営全体に関わる課題が複雑に絡み合っています。

特に2024年度改定からの2年間で進展したデジタル化や業務効率化の成果をどう活かすかが、今後の経営に大きく影響すると考えられます。

本記事では、2026年度に実施予定の診療報酬改定の全体像や2024年度との違い、経営に与える影響と取るべき事前対策について解説します。

 

診療報酬改定2026の概要と注目点

診療報酬改定2026の概要と注目点

厚生労働省が示す「2026年度診療報酬改定の基本方針について」によると、医療機関は、物価高騰により事業収益の増加以上に人件費や材料費などが増加し、事業利益が悪化している厳しい状況に直面しています。

2026年度改定はこれまでの基本方針の構成をベースとして、近年の社会情勢・医療を取り巻く状況を踏まえた改定になるといわれています。

この改定は、医療提供体制の持続可能性を高めつつ、医療従事者の処遇改善と業務効率化の両立を目的としています。

2026年度改定では、以下の4つの基本的視点が示されています。

  1. 物価や賃金、人手不足などの医療機関等を取りまく環境の変化への対応【重点課題】2. 2040年頃を見据えた医療機関の機能の分化・連携と地域における医療の確保、地域包括ケアシステムの推進
  2. 安心・安全で質の高い医療の推進
  3. 効率化・適正化を通じた医療保険制度の安定性・持続可能性の向上

 

特に注目すべきは、「物価や賃金、人手不足などの医療機関等を取りまく環境の変化への対応」が重点課題として位置づけられることです。

物価高騰による医療機関の経営悪化への対応が最優先事項となっています。

また、「医療の高度化や医療DX、イノベーションの推進等による、安心・安全で質の高い医療の実現」も含まれています。

加えて、電子カルテ情報の標準化やオンライン資格確認の完全運用など、デジタルインフラを整備する動きも強まっています。

これにより、医療機関間での情報共有や患者データの分析が進み、医療の質向上と経営判断の迅速化が期待されます。

また、病院経営の観点では、薬価・診療材料価格の適正化も重要テーマです。

市場実勢価格を踏まえた見直しが進むことで、病院のコスト構造に直接影響が及びます。

また、地域包括ケアの強化、在宅医療の拡充、医師偏在の是正といった政策もあわせて進められる見通しです。

上記より、2026年度の診療報酬改定は単なる報酬体系の変更ではなく、病院経営の仕組み全体を見直す契機といえます。

 

参考ページ:厚生労働省ホームページ「2026年度診療報酬改定の基本方針について」(https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001568771.pdf

 

2024年度からの主な変化

2024年度の診療報酬改定は、患者や医療機関の金銭的負担の影響を踏まえた対応や、医療DXの推進が中心テーマでした。

一方、2026年度改定は、これらの施策を踏まえたうえで増進させることが目的と考えられます。

例えば、実装段階に移行したDX基盤の整備、薬価制度改革の深化、そして医療の質と効率を両立する制度設計が挙げられます。

医療機関にとって医療DXは単なるシステム導入ではなく、経営全体の効率改善や医療の質向上といった、院内外への影響が大きい施策になります。

また、地域医療の分化・連携を促す方針がより明確化し、クリニックから中核病院まで一体となった情報共有体制の整備が求められます。

以下にて、2026年度改定で取り上げられている2つの変化について解説します。

 

オンライン資格確認と電子カルテ標準化

オンライン資格確認の完全義務化により、保険証確認からレセプト処理までの精度が飛躍的に高まります。

同時に、電子カルテ情報の標準化が全国的に進み、病院間のデータ連携が容易になります。

これにより、重複検査の削減や診療情報の共有化が進み、医療の質と経営効率の両立が実現します。

 

薬価制度改革と市場実勢価格の反映

薬価については市場実勢価格を反映した価格設定が進む一方で、診療材料価格の引き下げが想定されます。

その結果、医薬品コストや材料費が経営を圧迫する可能性があり、購買・用度部門ではデータ分析に基づく交渉力の強化が求められます。

 

医療経営に与える影響と課題

経営に与える影響と課題

診療報酬改定2026は、医療機関の経営構造そのものに影響を及ぼす改定になると予想されます。

加算・減算体系の変更や薬価制度の見直しは、収益の安定性や原価率に直接的なインパクトを与えます。

また、医療DXの進展に伴い、業務フローや人員配置にも見直しが求められる局面が増えるでしょう。

ここでは、特に重要となる「収益構造への影響」と「請求・業務フローの変化」について解説します。

 

収益構造への影響

2026年度改定では、「治す医療」と「治し、支える医療」を担うといった、病院機能ごとの役割分担を明確にする方向性が強まっています。

それぞれで治療・診療内容が異なるため、急性期・回復期・慢性期といった機能区分に応じて、評価体系や加算要件が見直される可能性が考えられます。

加算対象となる診療実績の基準が厳格化される一方で、チーム医療や在宅医療への対応など、新たな加算項目も登場する可能性があります。

一方、薬価・診療材料価格の引き下げは収益圧迫の要因となります。

収益性を確保するには、診療単価の改善に加えて、調達・在庫・人件費といったコスト構造全体の最適化が欠かせません。

経営企画部門では、改定内容を踏まえた原価率分析や部門別採算性の可視化が求められます。

 

請求・業務フローの変化

報酬改定に伴う算定ルールの変更は、医事課をはじめとする事務部門の業務負担を増加させます。

診療録やレセプトへの記載要件も複雑化しており、請求漏れや算定ミスが生じやすくなっています。

ヒューマンエラーによるミスやリスクを防ぐためには、改定内容を反映したレセプトチェック機能の強化と、AIを活用した自動審査の導入が有効です。

また、DX基盤を活用して医事課・用度部門・経営企画がデータを共有することで、リアルタイムの経営判断が可能となります。

請求データや材料消費データを横断的に分析する仕組みを整えることで、改定後の収益変動にも柔軟に対応できます。

当社コラムページ:診療報酬の請求ミスや算定漏れを防ぐ方法|要因と改善策を解説

医療DXがもたらす業務効率化と経営改善

医療DXは、単なるIT導入ではなく、医療経営の仕組みを根本から変革する取り組みです。

2026年度改定では、診療情報の標準化やデータ連携の強化を前提とした経営改革も求められます。

病院においては、電子カルテ・レセプト・SPDシステムといった機器・システムが統合対象となります。

これらのデータを連携させることで、診療実績・購買コスト・在庫管理のすべてを可視化できます。

ヌケモレや入力ミスなどヒューマンエラーを減らしつつ、材料の無駄や請求漏れを防ぎ、利益率の改善に直結します。

また、近年ではAIを活用した経営分析ツールの開発が進んでおり、リアルタイムでの収益管理やシミュレーションの実現も夢ではなくなりました。

 

業務効率化にも寄与

また、DX推進は医療従事者の業務効率化にも寄与します。

これまで紙や手作業で行っていた確認作業が自動化され、医療従事者は本来の診療業務に専念できる環境が整います。

こうしたデジタル基盤の整備が、改定対応をスムーズにし、病院経営全体の競争力を高める鍵となります。

 

病院が取るべき事前対策

病院が取るべき事前対策

2026年度の診療報酬改定に対応するためには、改定後を見据えた準備と組織的な対策が欠かせません。

単に制度を理解するだけではなく、収益構造の再設計やコスト削減の仕組みを整えることが重要です。

こちらでは、経営分析・DX推進・人材育成という3つの観点から、病院が取るべき具体的な取り組みを整理します。

 

経営分析とコスト管理

改定後の影響を見極めるために必要なのが、「データに基づく経営分析」です。

SPDシステムや購買データを活用し、診療材料・薬剤・人件費などのコスト構造を明確に把握することで、経営の可視化が進みます。

特に薬価改定によりコスト上昇が見込まれる項目は、早期に代替製品の検討や購買条件の見直しを進めることが求められます。

また、改定後のシミュレーションを実施し、診療報酬の変動が収益に与える影響を定量的に把握することが重要です。

上記以外にも、材料の無駄削減や在庫ロスの防止も経営改善に欠かせない要素といえます。

コストデータの分析を通じて、院内在庫の適正化や購入単価の見直しを行うことで、持続的なコスト削減を実現できます。

当社コラムページ:病院経営のコスト削減とは?種類と5つの実践ステップを詳しく解説

DXと標準化の推進

先述の通り、電子カルテやオンライン資格確認、SPDなど複数のシステムを連携させることで、情報の一元管理が可能になります。

これにより、請求漏れの防止や業務の属人化解消が進み、経営判断のスピードも向上します。

また、AIによる経営シミュレーションや自動レセプトチェックを導入することで、改定直後の算定エラーを減らすことができます。

データを活用した業務プロセスの見直しが、病院経営の効率化と再現性の高い収益構造を生み出します。

 

人材育成と組織体制の見直し

制度改定への対応力を高めるためには、医療従事者一人ひとりが改定内容を理解し、現場に反映できる体制を整えることが不可欠です。

経営企画部門・医事課・用度部門が連携し、改定に基づく業務フローを共有できる仕組みを構築しましょう。

また、改定に対応した内部研修や勉強会の開催、外部コンサルタントによるアドバイザリー支援の活用も効果的です。

組織全体で情報を共有し、変化に即応できる体制を整えることで、改定の影響を最小限に抑え、経営の安定化につなげることができます。

当社事例ページ:用度調達業務支援

今後のスケジュールと準備すべきポイント

今後のスケジュールと準備のポイント

以下は、診療報酬改定2026のスケジュール案をまとめたものです。

年月 中医協総会 医療経済実態調査部会 各専門部会・小委員会 備考
2025年4月 キックオフ 改定検討開始
2025年5月 調査実施開始 調査票確定後に実施開始
2025年6月 総会報告(調査票等の検討)
2025年7月 とりまとめ・総会報告 7年度調査実施・秋総会報告予定
2025年8月 議論開始
2025年9月 技術提案書募集開始
2025年10月 提案書評価・とりまとめ
2025年11月 総会報告・とりまとめ
2025年12月 総会報告・とりまとめ
2026年1月 総会報告・議論継続
2026年2月 議論・業界意見聴取
2026年3月 諮問・答申・附帯意見 改定案最終決定

 

改定案の最終決定は2026年3月を予定しており、以降は改定内容に沿って対応が求められます。

そのため、病院には今のうちに、改定後に柔軟に対応できるように改定案の概要を理解することが求められます。

 

参考ページ:厚生労働省ホームページ「2026年度診療報酬改定に向けた主な検討スケジュール(案)」(https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001473983.pdf

 

おわりに

本記事では、診療報酬改定2026の概要や2024年度からの変化、経営への影響、そして病院が取るべき対策について解説しました。

2026年度改定は、単なる制度変更に留まらず、医療提供体制や経営構造を根本から見直す契機となります。

経営分析やコスト管理の強化、DX推進、人材育成などを一体的に進めることで、改定後も安定した運営を維持できるでしょう。

 

病院の特性や課題に応じた最適な経営戦略を立案するためには、専門的な支援を受けることも有効です。

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タグ : 医療DX 診療報酬
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MRP医療コラム編集部

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