医療情報プラットフォームの役割や医療DXとの関連性について

2026.04.02医療経営

医療情報プラットフォーム

医療情報プラットフォーム(全国医療情報プラットフォーム)は、医療DXの基盤として整備が進む国家的構想です。

診療情報の標準化と共有を通じて、安全性と効率性の向上を目指します。

一方、医療機関の経営にどのような影響を与えるのかは十分に整理されていません。

本記事では、医療情報基盤の役割と医療DXとの関連性、さらに医療機関経営への示唆について解説します。

 

医療情報プラットフォームについて

医療情報プラットフォームは、診療情報を全国規模で連携する仕組みであり、政府は医療DX推進において重要な役割を担うものとして位置付けています。

昨今の日本は2025年問題や2040年問題に代表されるように超高齢化社会に直面しており、国民の健康向上を図るとともに、社会保障制度の持続が課題として掲げられました。

そこで政府は、医療DXにより以下の目標の実現を目指すとしています。

  • 国民の更なる健康増進
  • 切れ目なくより質の高い医療等の効率的な提供
  • 医療機関等の業務効率化
  • システム人材等の有効活用
  • 医療情報の二次利用の環境整備

要約すると、これまで以上に質の高い医療を、医療機関の業務負担を軽減しつつ効率化したうえで提供することが目的といえます。

これらを実現するために、以下を柱としています。

  • 全国医療情報プラットフォームの創設
  • 電子カルテ情報の標準化等
  • 診療報酬改定DX

以下にて、それぞれの柱について解説します。

 

全国医療情報プラットフォーム創設

全国医療情報プラットフォームは医療・介護・健康に関する情報を全国の医療機関や自治体などで共有するための情報基盤です。

平成29年(2017年)に厚労省でデータヘルス改革推進本部が設置されたあとの取組の一環であり、国民が自身の保健医療情報を把握できる仕組みを整備することが目的です。

オンライン資格確認等システムを基盤として、全国の医療機関や薬局を安全なネットワークで接続し、これにより電子カルテや検診情報などを必要なときに閲覧できるようになります。

以下は内閣府の定義です。

  • オンライン資格確認等システムのネットワークを拡充し、レセプト・特定健診等情報に加え、予防接種、電子処方箋情報、自治体検診情報、電子カルテ等の医療(介護を含む)全般にわたる情報について共有・交換できる全国的なプラットフォームをいう。

一方、現状では情報共有の主体が医療機関や薬局などに限定されている、共有できる情報が少ない、運用主体の整備が必要といった課題が挙げられます。

これらを解決するために、情報共有の主体を医療機関や薬局だけではなく自治体や介護事業者拡大すること、電子処方箋や電子カルテなど共有する情報の拡大、運用体制の整備などを図っています。

 

電子カルテ情報の標準化等

電子カルテ情報の標準化等とは、医療機関ごとに異なる電子カルテの仕様やデータ形式を統一し、医療情報を円滑に共有できるようにする取り組みです。

医療DX推進の一環として位置付けられており、全国医療情報プラットフォームと連携する基盤として整備が進められています。

現在の電子カルテはベンダーごとに仕様が異なるため、医療機関間で診療情報を共有することが難しいという課題があります。

そのため政府は、電子カルテのデータ形式や情報項目を標準化することで、医療機関間の情報連携を可能にし、より質の高い医療提供を実現することを目指しています。

以下は内閣府資料の考え方を要約したものです。

  • 電子カルテの診療情報を標準化し、医療機関間で円滑に共有できる仕組みを構築する
  • 標準化された電子カルテ情報を全国医療情報プラットフォームと連携させる

一方、現状では電子カルテの仕様がベンダーごとに異なることや、システム改修に伴う医療機関の負担、医療情報の安全管理などの課題が挙げられます。

これらを解決するために、電子カルテの標準仕様の策定、全国医療情報プラットフォームとの連携、医療機関の負担を考慮した段階的な導入などが進められています。

 

診療報酬改定DX

診療報酬改定DXとは、診療報酬改定に関する制度運用や業務プロセスをデジタル化し、改定作業の効率化や迅速化を図る取り組みです。

医療DXの推進施策の一つとして位置付けられており、医療機関やシステム事業者の負担軽減を目的として検討されています。

診療報酬改定は原則2年に1度実施されますが、現状では改定内容の反映に時間が掛かることや、医療機関やシステムベンダーが大規模なシステム改修を行う必要があるなど、運用面で多くの課題があります。

そのため政府は、診療報酬に関するデータや制度運用の仕組みをデジタル化・標準化することで、改定作業の効率化を進める方針を示しています。

以下は内閣府資料の考え方を要約したものです。

  • 診療報酬改定に関する業務やデータ処理をデジタル化・標準化する。
  • 医療機関やシステム事業者の改定対応の負担軽減を図る。

一方、現状では診療報酬制度が複雑であることや、医療機関・保険者・システムベンダーなど多くの関係者が関わるため、制度設計やシステム連携の調整が課題とされています。

これらを解決するために、診療報酬データの標準化やシステム連携の強化、政府主導による制度整備などが進められています。

参考ページ:厚生労働省ホームページ「医療DXについて

 

医療情報プラットフォームの利用

医療情報プラットフォームの利用

医療情報プラットフォームの利用は、診療現場での活用を目的とした「一次利用」と、統計や研究などに活用する「二次利用」の2つの形態に分類されます。

それぞれ利用目的が異なるため、制度の仕組みを理解することは医療機関の経営判断にも関わります。

こちらでは、医療情報プラットフォームの利用形態をご紹介します。

 

一次利用

一次利用とは、診療時に必要な医療情報を閲覧・活用することを指します。

患者の同意を前提として、薬剤情報や検査履歴などの情報を医療機関が確認できる仕組みです。

これにより、重複投薬の回避や過去の診療情報の把握が可能となります。

特に救急医療では、患者の医療情報を迅速に確認できることが診療判断の重要な材料となります。

その結果、診療の質向上や医療安全の確保につながり、医療事故リスクの低減にも寄与するとされています。

 

二次利用

二次利用とは、医療情報を匿名加工したうえで統計や研究などに活用することを指します。

主に政策立案や医療研究、医薬品開発などでの利用が想定されているほか、医療データを分析することで医療提供体制の把握にも活用されます。

例えば地域ごとの受療動向や医療需要の分析が可能になるため、エリアごとにまん延している疾患などを瞬時に把握できるようになります。

将来的には、こうしたデータを医療機関の経営指標の分析や医療政策の高度化に活用することも期待されています。

参考ページ:内閣府ホームページ「医療DX推進本部

 

医療情報プラットフォームの活用による医療機関のメリット

医療情報プラットフォームの整備

医療情報プラットフォームの整備は、診療効率の向上だけでなく、医療機関の経営にも様々な影響を与えると考えられています。

こちらでは、医療情報プラットフォームの導入によって期待される医療機関のメリットについて解説します。

 

重複検査の削減

医療情報プラットフォームにより、患者の検査履歴や診療情報を医療機関間で確認できるようになると、同一患者に対する重複検査の削減が期待されます。

これにより不要な検査の実施を回避できるため、医療資源の適正利用につながる可能性があります。

特に近年は医療材料費の高騰が医療機関の経営に影響を与えており、検査費用の適正化はコスト管理の観点からも重要な要素といえます。

検査情報の共有が進むことで、医療費の適正化と医療機関の経営安定の両面に寄与することが期待されています。

 

診療の標準化が進む

診療履歴や検査結果などの情報が共有されることで、医療機関間での診療の継続性が高まり、より一貫性のある医療提供が可能になります。

これにより、転院や紹介などの場面でも患者の診療情報を把握しやすくなり、適切な治療判断につながると考えられます。

また、過去の診療情報を踏まえた医療提供が可能になることで、診療の質向上や患者満足度の向上にも寄与する可能性があります。

 

データ分析の高度化

医療情報プラットフォームにより、診療実績や疾患構成などのデータを把握しやすくなることも大きな特徴です。

これらのデータを経営分析と連動させることで、診療科ごとの収益構造や医療資源の配分状況をより詳細に分析することが可能になります。

さらに、地域医療における自院の役割を客観的に把握できるようになり、他施設との比較検討も行いやすくなります。

こうした分析結果を経営判断に活用することで、より客観的な指標に基づく医療機関経営が実現すると考えられています。

 

医療情報プラットフォームの活用における医療機関の注意点

プラットフォームによる医療機関の注意点

一方で、医療情報プラットフォームの活用にはいくつかの留意点もあります。

医療情報は極めて機密性の高い個人情報であるため、制度を活用する際には適切な情報管理体制を整備することが前提となります。

また、新たなシステム運用やデータ管理の体制構築が必要となるため、医療機関の業務負担やコスト面にも一定の影響が生じる可能性があります。

 

医療DXの実現に向けて

医療DXの実現に向けて

医療DXは単にシステムを導入することを意味するものではなく、医療データを経営資源として捉え、そのデータを活用して医療の質向上や経営改善につなげていく視点が重要になります。

その基盤となるのが全国医療情報プラットフォームをはじめとする医療情報基盤であり、これらの基盤をどのように活用するかによって、医療機関の経営力や競争力にも差が生まれる可能性があります。

 

診療データと医療材料データを組み合わせた分析

まず重要になるのが、診療データと医療材料データを組み合わせた分析です。

例えば、材料費などの購買データと連動させることで材料費や調達コストの詳細な分析が可能になり、調達価格の最適化やコスト管理の高度化につながります。

 

経営企画部門による指標設計

次に、経営企画部門による指標設計も重要な要素となります。

単に医療データを閲覧するだけでなく、診療実績やコスト構造を踏まえた経営指標を設計し、継続的に分析を行うことが求められます。

必要に応じて外部の専門機関による分析支援を活用することも有効な手段となります。

医療DXの進展に伴い、データ活用力の差が医療機関の競争力に直結する可能性もあるため、戦略的な視点での取り組みが求められています。

 

おわりに

本記事では、医療情報プラットフォームの役割と医療DXとの関連性、さらに医療機関経営への示唆について解説しました。

医療DXは単なるシステム導入ではなく、医療データを経営資源として活用する取り組みでもあります。

全国医療情報プラットフォームや電子カルテ情報の標準化が進むことで、診療の質向上だけでなく、医療機関の経営分析や意思決定にもデータ活用の重要性が高まると考えられます。

今後は制度の理解に加え、院内での分析体制の整備やデータ活用の仕組みづくりが、医療機関の持続的な経営において重要な要素となるでしょう。

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タグ : 業務効率化 経営戦略
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MRP医療コラム編集部

病院経営改善・コスト削減コンサルティングの株式会社エム・アール・ピーが発信する「MRP医療コラム」です。医療経営に関する様々なお役立ち情報を発信します。