医療材料費の収支改善から進める病院経営の分析

2025.05.29医療経営

医療材料費の収支改善

医療経営では、人件費や光熱費、医療材料費といった様々な費用が発生します。

集患数を増加させるだけではなく、診療材料費・医薬品費などの出費を抑えることで変動費の削減につながり、剰余金の創出に直接的に貢献できます。

また、医療材料や医療消耗器具備品などは病院における支出全体の中でも大きな割合を占め、改善の余地が残されていることがあります。

本記事では、医療材料費の収支改善から進める病院経営の分析について解説します。

 

医療現場における材料費とは

医療現場における材料費とは、診療や治療に使用される消耗品や医療機器に掛かる費用を指します。

例えば、注射器やガーゼ、手術用の縫合糸から、検査機器のセンサー類に至るまで、幅広い品目が対象です。

医療材料費は厚生労働省によって、品目や公定価格などが定義されているものもあります。

病院経営において、材料費は収益に対して一定の割合を占めるコストのひとつです。

そのため、材料費を適切に管理することで、病院全体の収益改善に貢献すると考えられます。

医療材料の価格は年々上昇傾向にあり、特に高度な技術を要する医療機器や使い捨て製品の増加、流通コストの増加などにより経費の増大を招いています。

材料費は病院の支出全体の中で委託費や減価償却費と並んで大きな割合を占めるため、収支の改善を図る上で無視できない項目です。

また、DPC(診断群分類別包括評価)制度の導入によって、患者一人あたりの費用管理が重要になってきました。

このため、在院日数や臨床指標との関連も考慮しながら、材料費の適正化に取り組む必要があります。

 

材料費の増加が病院経営に与える影響

材料費の増加と病院経営

結論として、材料費の比率が高まると、利益率が低下しやすくなります。

医療技術の高度化に伴い、高価な医療機器や先進的な消耗品の使用が不可欠となる一方で、診療報酬は抑制傾向です。

そのため、コストの増加を医業収益だけではまかないきれなくなっています。

さらに、材料費が増加すると経費全体のバランスが崩れやすくなり、結果的に経営資源の適正配分にも影響を及ぼします。

在院日数や外来患者数といった収益に関する指標においても、材料費負担の重さが病院経営の柔軟性を損なう要因となりかねません。

このような状況下では、材料費の構成を精緻に分析し、コスト削減と医療の質向上を両立させる戦略的な取り組みが求められます。

 

材料費を可視化する経営分析手法

こちらでは、材料費を可視化する経営分析手法として、「ABC分析」と「原価計算による詳細把握」について解説します。

 

ABC分析

ABC分析とは、活動単位ごとにコストを配分し、資源消費の実態を可視化する手法です。

診療科別や治療プロセス別に材料費を分類し、コストの高い領域を特定できます。

ABC分析により、重点的な改善対象を明確にし、効率的なコスト削減施策の立案が実現できるのです。

 

原価計算による詳細把握

原価計算による詳細把握では、患者単位や診療行為単位で材料費を記録・集計します。

診療単位ごとの収益性を詳細に把握でき、非効率な部分を可視化する際に用いられます。

DPC制度では、正確な原価管理が病院経営の成否を左右する要素です。

 

医療材料費の観点における収益改善

医療材料費の観点での収益改善

以下にて、医療材料費の観点における収益改善方法をご紹介します。

 

共同購入の活用

複数の医療機関が連携し、共同購入を行うことで、単独で調達する場合よりもボリュームディスカウントによるコスト削減が期待できる場合があります。

スケールメリットを活かすことで、価格交渉力が高まり、標準化された医療材料の選定にもつなげられます。

また、共同購入によって得られるコスト削減効果は利益向上にも直結するため、戦略的な取り組みが重要となります。

特に中小規模病院では、地域連携を通じた共同調達の仕組みを構築することが重要です。

ただし、共同購入を検討する場合においても、必ず単品単価で交渉および効果検証できるような体制・仕組みで運用することが重要です。

 

サプライヤーとの価格交渉

サプライヤーとの定期的な価格交渉は材料費管理において不可欠ですが、単なる価格引き下げ交渉だけでは難しいのが実態です。

取引量、供給エリア、供給の安定性、支払条件、同等品の調査、他施設の状況など総合的な情報を見極めながら交渉を行う必要があります。

サプライヤーとの信頼関係を構築しつつ、価格適正化に向けた課題を明確化することで、院内での交渉戦略にも役立てることが重要です。

 

医療材料選定プロセスの標準化

医療材料の選定基準を明確にし、組織内で標準化することは、無駄なコスト発生を防ぐ上で効果的です。

選定基準には、品質、安全性、コスト、治療成績への影響などを考慮し、科学的根拠に基づいた評価体制の整備をすることが求められます。

臨床現場の先生や看護師、医療ソーシャルワーカーなど多職種が関与することで、より実効性の高い材料選定が可能となります。

 

データ分析による調達戦略の高度化

調達活動にデータ分析を取り入れることで、実績にもとづいた意思決定が可能になります。

例えば、材料別の使用頻度や単価推移を可視化することで、調達価格の妥当性や標準化の効果を客観的に評価できます。

PDCAサイクルを回しながら調達戦略の継続的な改善を図ることが、経営安定化への近道となります。

 

おわりに

本記事では、医療材料費の収支改善から進める病院経営の分析について解説しました。

医療における材料のなかには注射器やガーゼ、手術用の縫合糸など、幅広い品目が含まれています。

これらが適切に管理されていないと経営を圧迫する要因となるため、改善の際は現状や過去を知るところから始めます。

分析結果から改善する方法として、共同購入の活用やサプライヤーとの価格交渉、医療材料選定プロセスの標準化、データ分析による調達戦略の高度化などが挙げられます。

医療材料は多すぎず少なすぎず、常に適量を管理することが重要です。

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MRP医療コラム編集部

病院経営改善・コスト削減コンサルティングの株式会社エム・アール・ピーが発信する「MRP医療コラム」です。医療経営に関する様々なお役立ち情報を発信します。