医療現場の物品管理とは?効率化する方法と管理システムをご紹介!
2023.09.05医療経営病院では、医師が快適に診療を行ったり、事務員が滞りなく業務を処理したりするために、様々な物品が使われています。
しかし、「いつか使うだろう」と考えて余分に購入した物品が使われなかった場合、当然ながらその費用が無駄になります。
そのため、病院やクリニックといった医療現場では、最適な物品かつ最適な在庫量になるよう管理を行う「物品管理」が重要です。
本記事では、医療現場の物品管理について、効率化するための方法論と管理システムについてご紹介します。
病院の物品管理とは
病院における物品管理とは、診療や事務作業などの際に使用する機材や道具の管理を指します。
管理対象となる物品は、下記のように「医療材料」や「衛生材料」といったものが含まれます。
医療材料
医療材料は、診療や手術の際に使用する材料のほか、医薬品や医薬部外品、医療機器といったものを指します。
患者さんを診療する際に使用するもので、なかには薬事法上の位置づけが無いものも含まれます。
また、医療材料のなかには保険請求が可能なものもあります。
物品管理を行う際は、保険請求が可能なものとそうでないものを明確に区別して管理することが重要であり、保険請求漏れの防止にもつながります。
衛生材料
衛生材料とは、ガーゼやばんそうこう、ロールフィルムといった診療や治療の際に使われる物品です。
雑菌や汚れなどが付着しないように、衛生材料には清潔であることが求められます。
そのため、ほとんどの衛生材料は使い捨てで使用される傾向にあります。
衛生材料は使用頻度が高いことから、常に適量の在庫を管理しておく必要がある点には注意が必要です。
このように、病院では様々な物品が使われていることから、購入の際には多額の費用を使用しています。
物品管理を行い最適な在庫を確保することで、無駄な出費を抑えることができます。
病院における物品管理の業務内容とは
こちらでは、病院における物品管理の業務内容についてご説明します。
物品の消費管理
先述の通り、病院では診療のたびに多くの衛生材料や医療材料を使用しています。
また、物品の消費管理においては納品の迅速性と正確性が求められます。
医療の現場では緊急を要することが多く、その際に必要な物品が無かったといった事態を避けなければなりません。
物品を使用した際、いつ・どのような目的で・いくつ使用したのかを把握することは物品の消費管理において重要な要素です。
物品の在庫管理
物品の在庫管理では、適切な量の在庫が確保できているのか、物品がどこに持ち出されたのかを管理します。
病院では毎日様々な物品を使用するため、在庫を切らさないように管理をすることが重要です。
しかし、在庫を切らさないために大量の物品を発注すると、スペースや経費の圧迫といった問題が発生します。
また、節約のために最小限の物品しか発注しなかった場合、緊急時に在庫が無いといった事態に陥る可能性があります。
使用者や物品の数量・保管場所を明確にすることで、何がいくつ在庫されているのかを明確にすることが適正な在庫管理への第一歩だと言えます。
物品の購買管理
物品の購買管理とは購入した物品の内容や数量を確認・管理し、発注効率を改善する作業です。
様々な患者さんに対応するため、病院では十分な在庫量の物品が求められます。
しかし、経営において過剰在庫はマイナス要因となることから、可能な限り物量を抑えて保管をしておきたいものです。
物品の購買管理は医療の質を下げず、経営状況を悪化させないような適量の在庫を確保するために購入・管理する作業です。
運営上ムダな在庫が発生した場合、適量の在庫数を把握するために過去の推移や世間の情勢などを考慮して算出し直します。
医事請求の管理
病院の主な収入は、診療行為に関する情報を支払基金に請求することで得られる「診療報酬」です。
診療報酬を請求する際は、適正な報酬を受け取るために必要な書類に、正しい情報を記載する必要があります。
書類の記入漏れやミスが発覚した場合、何度もやり直したり診療報酬を受け取れなかったりします。
また、医療材料などの物品のなかにも診療報酬を請求できるものがあるため、担当者には請求の可否を調査・判断する能力が求められます。
問い合わせ対応
病院には患者さんだけではなく、患者さんの親族や物品の販売業者など、様々な方から連絡を受けます。
病院は多忙な環境であるため、端的かつ要点を含んだコミュニケーションが求められます。
また、複数の診療科からの「〇〇がいくつ必要」といった連絡にも対応しなければなりません。
このように、様々な問い合わせに対応することも物品管理者の担当業務だと言えます。
物品管理の業務を効率化する方法
物品管理は病院を運営するにあたり、収支に影響を及ぼす重要な業務のひとつです。
しかし、手作業だったりスタッフ間での理解に差があったりした場合、過不足が発生してしまいます。
最適な物品管理を行うためには、業務の効率化も必要であると言えるでしょう。
下記にて、物品管理の業務を効率化する方法についてご説明します。
物品の管理方法マニュアルの構築
管理業務に関するスタッフ間での認識のズレを解消するためには、マニュアルの構築が有効です。
「〇〇は最低でも〇〇個必要」「〇〇は使うたびに発注する」といった認識を共有することにより、齟齬を解消することができます。
下記、物品の管理マニュアルで使われる管理方法の一例です。
定数管理
定数管理とは、診療科目や部署ごとに医療材料や衛生材料といった物品を保管する数を決める方法です。
管理する物品に情報が記載されたラベルを貼り付けておき、使用時にラベルをはがして回収することで在庫数のズレを防ぎます。
一定数で在庫を確保する方法である定数管理は、医療現場で基本的な管理方法として取り入れられています。
かんばん方式
かんばん方式は「必要なものを、必要な時に、必要な量を生産する」というトヨタ自動車が発案した管理手法として知られています。
商品を管理するための「かんばん」と呼ばれるカードが由来となっており、そのカードには商品名や品番、保管場所などといった商品に関する情報が記載されています。
ノートやエクセルを使った管理表
ノートやエクセルを使った管理表を使用する場合、使用するたびに使用者が記録して物品を管理する方法です。
管理者はそのノートやエクセルを確認しながら、発注先となるメーカーや仕入れ先の業者に物品の納品を依頼します。
SPD(院内物流管理)業者・システムを利用
SPD(Supply:供給、Processing:加工、Distribution:分配)とは、病院で使用する物品の小分け・物流管理などを行う業務を指します。
運用方法には自院ですべて行う・物品管理を業者に依頼する・物品管理と調達業務を業者に依頼するといった方法があります。
外注業者を利用する際は運用手数料が発生しますが、院内スタッフの作業負荷を軽減することによって業務効率の改善が可能です。
物品管理システムを導入
物品管理システムとは、センサーやインターネット環境などを利用して物品の在庫を管理するシステムです。
手作業での管理は、気を付けていてもヒューマンエラーが発生するものであるため、在庫数に狂いが発生する可能性は無くなりません。
物品管理システムは機械的に管理することから在庫数が狂いにくいほか、管理業務の時間を削減することができます。
このように、物品管理には様々な方法があります。
しかし、手作業で管理をしていると記入ミスやモレなどが発生するため、在庫数に狂いが発生する可能性はつきものです。
そのため、近年では多くの病院が在庫管理システムを導入するようになりました。
物品管理の効率化にも繋がる医療材料データベース「MRP商品マスタ提供システム」
当社のMRP商品マスタ提供システムは、医療現場の物品管理に関する負担の軽減にも寄与します。
下記にて、MRP商品マスタ提供システムについてご説明します。
MRP商品マスタ提供システムの概要
病院で使われる医療材料や衛生材料には多くの種類があるため、手作業での管理は困難でしょう。
当社が開発した「MRP商品マスタ提供システム」は、様々な物品のマスタ情報を、すぐに調べることができます。
購買管理の際にはメーカーや業者名、商品単価や公定価格など様々な情報を管理しなければなりませんが、当該マスタを活用いただくことでそれらの情報を一元管理することができるため、管理作業の改善が期待できます。
MRP商品マスタ提供システムの活用イメージ
商品マスタには、下記のような情報が含まれます。
- 付加価値評価情報
- 保険請求情報
- 医事会計連携情報
- 管理用情報
- 同種・同効品
- 価格情報
これらをまとめて管理することで、新たに採用する商品の選定や医事請求の際に参照することができます。
また、定価などの把握にも活用することができますが、価格情報を参照することでメーカーや仕入れ先の業者との交渉がしやすくなる点も見逃せません。
物品管理の注意点
物品管理を行う際は、オンライン・オフライン共にセキュリティ面に注意しましょう。
オフライン上では数量ミスや記入漏れといったヒューマンエラーが挙げられます。
また、物品の盗難被害もオフラインにおけるトラブルに含まれる要素です。
そのため、誰が・いつ・どのような目的で物品を持ち出したのかがわかるようなシステムを構築する必要があります。
近年ではインターネット技術が普及したことにより、AIやIoTを導入する病院も多くなりました。
しかし、インターネット上にはコンピューターウィルスやマルウェアといった、システムに重大な影響を及ぼすものがあります。
なかには在庫数を書き換えてしまうような、経営に大きな影響を及ぼしてしまうコンピューターウィルスも存在します。
パソコンなどを用いて物品を管理する際は、システムを導入する端末を制限したり、ファイアウォールを設けたりするなど、セキュリティ強化もあわせて行いましょう。
おわりに
本記事では、医療現場の物品管理について、効率化するための方法論と管理システムをあわせてご紹介しました。
病院では医療材料や衛生材料といった様々な物品が使われているため、最適な在庫量による運用管理が求められます。
使用量や在庫量、購入量といった情報を管理することで、不測の事態でも対応可能な物品を保管しておくことができます。
しかし、物品管理はヒューマンエラーが発生しやすい業務でもあることから、近年ではシステムを導入する病院が多くなりました。
管理者の負担を減らし、効率良く物品管理を行いたい病院は管理システムの導入検討をおススメします。
MRP医療コラム編集部
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