長期収載品の選定療養の基本|対象品目や計算方法をわかりやすく解説

2024.11.20医療経営

長期収載品の選定療養の基本

病院ではさまざまな薬を取り扱っており、そのなかには新薬や長年使われている薬などが含まれています。

長期間使われている薬のなかには、すでに特許が切れていたり、再審査期間が終了していたりするものもあります。

近年ではジェネリック医薬品など、同じ効果を持ちながら安価で購入できる薬の開発も進行しています。

本記事では、長期収載品の選定療養の基本や対象品目、計算方法について解説します。

 

選定療養とは?

選定療養とは、患者が追加費用を支払って自分が受けたい医療・療養を選択できる医療サービスを指します。

たとえば、入院時の個室利用や紹介状がない状態での大病院における受診などが挙げられます。

下記は厚生労働省が明記している、選定療養の種類です。

  • 特別の療養環境(差額ベッド)
  • 歯科の金合金等
  • 金属床総義歯
  • 予約診療
  • 時間外診療
  • 大病院の初診
  • 大病院の再診
  • 小児う蝕の指導管理
  • 180日以上の入院
  • 制限回数を超える医療行為
  • 水晶体再建に使用する多焦点眼内レンズ
  • 保険適用期間終了後のプログラム医療機器
  • 間歇スキャン式持続血糖測定器
  • 精子の凍結及び融解
  • 長期収載品

 

参考ページ:厚生労働省ホームページ「先進医療の概要について」

(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/sensiniryo/index.html)

 

長期収載品の選定療養について

長期収載品の選定療養

選定療養のなかには、「長期収載品」と呼ばれるものが含まれています。

長期収載品については政府から明確に定義されているわけではありませんが、一般的には後発医薬品がある先発医薬品を指します。

たとえば、ジェネリック医薬品のもとになった、同じ効能を持つ先発医薬品などが挙げられます。

長期収載品と後発医薬品には、下記のような役割分担が生じます。

長期収載品 後発医薬品
安定供給 l  安定供給することが求められており、具体的には、医療機関から継続供給を求める意見が強いことなどにより、安易に供給停止をすることができない。 l  安定供給することが求められているものの、長期収載品と比較して、供給停止を行う場合のハードルは低い。
情報提供 l  研究開発段階からの品目に係る情報が蓄積されている。

l  医療機関からの問い合わせや医療機関への情報提供に対応することが比較的多い。

l  長期収載品に比べ、品目に係る蓄積された情報は少ない。

l  医療機関からの問い合わせや医療機関への情報提供に対応することが比較的少ない。

 

参考ページ:内閣府ホームページ「長期収載品について」

https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/special/reform/wg1/291018/sankou2-8.pdf

 

選定療養の対象品目の範囲

選定療養の対象となるのは、下記の条件を満たすものになります。

  • 後発医薬品がある先進医薬品である
  • 後発医薬品が収載された年数や後発品置換率の観点から、下記のいずれかに該当する
    • 後発医薬品が初めて薬価基準に収載されてから5年を経過した品目
    • 後発医薬品が初めて薬価基準に収載されてから5年を経過しない品目のうち、後発品置き換え率が50%以上のもの
  • 長期収載品の薬価が後発医薬品のなかで最も薬価が高いものを超えていること
    • 薬価の比較には組成・企画・剤形ごとに判断する

 

これらは厚生労働省によって定められているもので、下記ページから対象医薬品リストをダウンロードできます。

https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001247591.pdf

https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001247592.xlsx

 

参考ページ:厚生労働省ホームページ「長期収載品の処方等又は調剤に係る選定療養の対象医薬品について」

https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001247593.pdf

 

長期収載品の選定療養費の計算方法

選定療養費の計算方法

選定療養を選択しなかった場合、患者さんは「選定療養を除く保険対象となる費用 × 自己負担率」の費用を支払います。

しかし、選定療養を選んだ場合は、上記の自己負担に特別の料金を加算して支払わなければなりません。

下記にて、選定療養を選ばなかった場合の費用と、選んだ場合の費用の算出方法をご紹介します。

 

選定療養を選ばなかった場合の費用

  1. 保険外併用療養費の算出に用いる価格から、数量等に応じて算定告示に基づき薬剤料(点)に換算します。
  2. その値に× 10(円/点)を掛け合わせることで、求められます。

 

なお、このなかには保険外併用療養費{B ×(1 – 自己負担率)}と患者自己負担(B × 自己負担率)が含まれています。

選定療養を選んだ場合の費用

  1. 特別の料金を求める際、まずは長期収載品と後発医薬品の価格差の4分の1に相当する点数に換算します。
  2. ここで求めた点数に× 10(円/点) × (1 + 消費税率)を算出します。
  3. この値に、「選定療養を選ばなかった場合の費用」で求めた価格を合算することで求められます。

 

点数や価格については薬の品目によって異なるため、対象医薬品リストから確認しましょう。

 

おわりに

本記事では、長期収載品の選定療養の基本について解説しました。

選定療養とは、患者さんが追加費用を支払って自分が受けたい医療・療養を選択できる医療サービスを指します。

長期収載品については政府から明確に定義されているわけではありませんが、一般的には後発医薬品がある先発医薬品を指す薬です。

対象品目やそれぞれの点数などが異なるため、詳しくは厚生労働省のページなどで確認する必要があります。

患者さんへのサービス向上のために、さまざまな選択肢を用意しておくと良いでしょう。

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MRP医療コラム編集部

病院経営改善・コスト削減コンサルティングの株式会社エム・アール・ピーが発信する「MRP医療コラム」です。医療経営に関する様々なお役立ち情報を発信します。