病院の経費削減の方法とは?経費の種類と取り組むべき削減対策を解説
2023.09.05医療経営病院では患者さんを診療し回復させるため、医師やコメディカル・事務スタッフによって様々な機器・備品が使用されます。
質の高い医療を提供するためには、最新の設備や十分な備品を用意しなければなりません。
しかし、高額なものを導入すると、病院の経営を圧迫する原因となってしまいます。
本記事では、病院の経費削減に関する方法論について、経費の種類や取り組むべき対策とあわせて解説します。
病院の経費削減が重要視される背景
病院の主な収入源は、患者さんの診療をしたのち特定の機関に診療内容を申請することで得られる「診療報酬」です。
原則2年に一回の診療報酬改定において、近年では診療報酬(本体)は0.5%前後のプラス改定が行われています。
しかし、薬の公定価格については1.0%から1.5%程度のマイナス改定が行われているため、全体的にはマイナスであると言えます。
また、近年では流行病の影響によって患者さんの数が減少したり、消費税が増税されたりといった外部要因も経営を苦しめています。
国の対策として補助金や助成金制度を設けていますが、一時的な対策であることが多いです。
患者さんの数が減り、経営にマイナスの要因を受けたとしても、病院には最適な診療を行い、安定した経営が求められます。
そのため、病院では以前よりも経費削減を重要視するようになりました。
病院の経営者は徹底的にムダを省き、最適な人員や備品などを見直すことで経営を安定させようと努めています。
病院経営における経費の種類
下記にて、病院を経営する際に発生する主な経費の種類をご説明します。
材料費
病院における材料費とは、医薬品やメスなど、日々の診療を行う上で必要となるものを購入する際に発生する費用を指します。
医薬品や診療材料は、病院の支出のうち35~45%程度の割合を占めると言われています。
そのため、材料費を見直すことで経営を改善できる可能性が高いことから、経費削減の対象になることが多いです。
経費・固定費
病院で発生する経費には、リース料や福利厚生費、旅費交通費、光熱費といったものが含まれています。
近年では流行病の影響やインターネット技術の発展などによって、旅費交通費を抑えられるWeb会議を導入する病院が多くなりました。
また、リース料を抑えるために必要最低限の機能を備えた、低額な医療機器を導入する病院もあります。
委託費
病院における委託費とは、病院が外部の業者に一部の業務を外注する際に発生する費用を指すものです。
具体的には検査・給食・清掃・院内物流・警備・点検などが委託業務に含まれており、サービスを受けるために外注先へ費用を支払います。
医師や看護師が患者さんの診療やリハビリに集中できるように、病院は診療以外の業務を外注するケースが多いです。
減価償却費
減価償却費とは、固定資産の購入額を耐用年数に合わせて分割し、その期間ごとに費用として計上する勘定項目です。
病院では建物や医療機器、情報システムの導入費用などが減価償却費の対象になります。
高額かつ耐用年数が短いものほど毎年の減価償却費は高額になる傾向にあるため、病院は費用と耐用年数を考慮して購入します。
病院経営の経費削減で取り組むべき費用項目
こちらでは、病院経営の経費削減で取り組むべき費用項目についてご説明します。
材料費の購入価格の適正化
先述の通り、病院では様々な医薬品や診療材料を購入し、診療や事務作業の際に使用しています。
それら材料のなかには毎日使用するものもあれば、使用頻度が低いものもあります。
しかし、業者が適正価格を提示しておらず、市場価格とは乖離した状態で購入している商品もなかには含まれているものです。
材料費を抑えるためには、仕入価格(購入価格)の適正化を図りましょう。
複数の業者に相見積もりを取ったり、市場価格を把握し適正価格に向けた交渉を行ったりすることが価格の適正化につながります。
設備管理費
病院ではCTスキャンやMRIといった、様々な機材を導入しています。
なかには定期点検が必要なものや、消耗品を使用するものといった、ランニングコストが発生するものもあります。
そのため、設備管理費を抑えるためには外注しているサービスの見直しを検討しましょう。
たとえば、消耗しにくい部品に交換してもらう、技術料や訪問出張費を抑えてもらうといったことが挙げられます。
また、施設の清掃については汚れが付着しにくい素材に変更することも、設備管理費を抑えるための方法のひとつと言えるでしょう。
委託費
病院では患者さんの診療行為に集中するため、警備会社やメーカーなどに様々な業務を外注しています。
快適な診療ができる一方、外注するほど高額な委託費が必要になることから、経営を圧迫する要因となります。
委託費を抑えるためには、本当に外注が必要なサービスなのかを見直すことが重要です。
たとえば、清掃スタッフを雇用して外注を無くしたり、配置している警備員の数を減らしたりといったことが挙げられます。
自院でできる作業は無いのかを見直すことが、委託費を抑えるためには重要な考え方だと言えます。
経費
医師など医療従事者のなかには、医療のスペシャリストである一方、コスト意識が低い方もいらっしゃいます。
そのため、経営をするうえで不要な経費を計上したり、過剰な経費がかかったりすることがあります。
経費を抑えるためには、病院全体でコスト削減の意識を持つことが重要です。
たとえば、在庫商品を優先的に使用したり、使えなくなるまで備品を使い切ったりすることが挙げられます。
経費を削減しても医療の質が下がることはほとんどないため、すぐに始められる対策であることが魅力です。
病院の経費削減で取り組むべき対策
先述の通り、病院では様々な経費が発生するため、スタッフ個人がコスト削減の意識を持つことが重要です。
下記にて、経費を削減する方法の具体例をご紹介します。
通信費・水道光熱費・保険料
通信費や水道光熱費、保険料は病院を運営するうえで不可欠なものである一方、経費内で占める割合が高いものでもあります。
これらの経費を削減するためには、使用していない機材は電源を切る・省エネの設備を導入するといったことが挙げられます。
たとえば、CTスキャンやMRIは待機時でも多くの電力を使用するため、使わないときは電源を切っておくことも検討しましょう。
また、トイレについては、流す際に多くの水を使うものよりも、少量の水で同等の効果を得られるものを導入する方が節水効果は当然高いものです。
ほかには、様々な企業に相見積もりを取って比較することもコスト削減における有効な方法と言えます。
委託費
委託費を見直すためには、複数企業への相見積もりを取ることがおすすめです。
たとえば、A社が毎月50万円で、B社が同様のサービスで毎月40万円といったことがあります。
この場合、B社に依頼したほうが委託費を削減できることは、お分かりいただけることでしょう。
実際に、現在お付き合いしている業者以外に見積もりを取ったところ、大幅に委託費を削減できた病院は多くあるものです。
また、相見積もりを取るなかで様々な企業からの提案内容を精査し、自院にとって適切なサービス内容に見直しすることも非常に重要であると言えます。
ベンチマーク分析
自院が負担している費用が適切なのかを調べるためには、ほかの病院の経営状況と比較すると良いでしょう。
ベンチマーク分析では自院と他院の経営状況を比較して、どの費用を多く使用しているのかを知ることができます。
たとえば、警備に関する委託費用が他院よりも高額だった場合、人員配置の見直しや価格交渉などを行うことが挙げられます。
また、粗利率や営業利益率については、どこにいくらの費用を支払っているのかを知ることで、改善の糸口が見いだせることでしょう。
このように、自院の経営改善において他院との比較は重要な要素だと言えます。
共同購入
共同購入とはまとめ買いと同義で使われる言葉であり、大量に購入することで商品ひとつあたりのコストを抑える方法です。
病院では様々な備品を使用しているため、無くなったときは都度発注をして補充します。
しかし、複数の業者を利用している場合はまとめ買いが難しいため、共同購入によるメリットを見出すことは難しいものです。
共同購入によって単価を下げるためには、業者を絞ってお付き合いすることがおすすめです。
また、ひとつの業者にまとめて発注することで管理が容易になる点も共同購入のメリットだと言えます。
物品管理
物品管理とは、病院を運営する際に使用した機材・備品の数量や状態、保管場所などを管理することです。
病院では多くのスタッフが様々な機材・備品を使用しているため、管理が煩雑になってしまうことが多いです。
適切に管理ができていなかった場合、必要なものを探したり不要な発注をしなければならなかったりします。
物品管理は費用を掛けず、すぐに実施できる対策であるため、実施していない病院は取り入れることをおすすめします。
病院の経費削減の大切なポイント
病院の経費削減における重要なポイントは、「交渉」と「継続」です。
病院では様々な業者と提携して業務に臨んでいることから、外部の関係者と話す機会が多くあります。
経費削減の際には、価格交渉やサービスの変更などについて話すため、経営者や担当者には交渉術が求められます。
経費削減は一時的に実施するものではなく、継続して行うことで効果が最大化するものがほとんどです。
たとえば、個人がコスト意識を持ち、無駄遣いを減らすことは継続した対策だと言えます。
コスト意識に関する注意は費用を掛けずに実施できる対策であるため、経営者は各スタッフに定期的に伝えることが重要です。
また、スタッフからコスト削減に関する相談・提案を受けることがあるため、経営者は積極的にスタッフの話を聞き入れましょう。
スタッフ全員でコスト削減に臨むことで、医療の質を下げずに経営状況を改善することができます。
おわりに
本記事では、病院の経費削減に関する方法について、経費の種類や取り組むべき対策を解説しました。
近年では流行病の影響で患者さんの数が減ったり、診療報酬が厳しくなったりしたことで経営を圧迫されている病院が多くあります。
そのため、病院では材料費や経費・固定費、委託費、減価償却費の削減が求められています。
病院の経費削減における重要なポイントは「交渉」と「継続」であることから、継続してコスト削減の意識を持つことが重要です。
長く患者さんに愛される病院を経営するために、不要なコストは削減するようにしましょう。
MRP医療コラム編集部
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