薬価改定の最新動向|2024年度改定内容と2023年度の調査結果

2024.10.10医療経営

薬価改定の最新動向

2024年4月1日、厚生労働省より薬価基準改定が発表されました。

そもそも、今回の薬価改定はどのような目的で実施されたのか、以前はどのような状況だったのでしょうか。

本記事では、薬価改定の最新動向について、2024年度改定内容と2023年度の調査結果をあわせて解説します。

 

薬価とは

薬価とは、医療機関などから処方される薬に設けられている、「薬価基準」に記載されている医療用医薬品の価格を指します。

 

薬価の算定方法

薬価の算定方法

薬価については中央社会保険医療協議に基づき、下記の「市場実勢価格加重平均値調整幅方式」で算定されます。

 

  • 薬価 = (税抜き市場実勢価格の加重平均値) × {1 + 消費税率(10%)} + 調整幅

 

調整幅については改定前薬価の2%相当の額であることが、厚生労働省のホームページに明記されています。

対象となる薬の告示数および品目数は下記であることから、多くの薬が対象になっていることがお分かりいただけるでしょう。

内用薬 注射薬 外用薬 歯科用薬剤 合計
告示数 7,264 3,567 2,060 26 12,917
品目数 11,171 3,730 2,354 26 17,281

 

今回の改定率は医療費ベースで▲0.97%、薬剤費ベースで▲4.67%となります。

このうち、実勢価等改定分は医療費ベースで▲0.83%、薬剤費ベースで▲4.00%です。

 

参考ページ:厚生労働省ホームページ「令和6年度薬価基準改定の概要」

(https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001218693.pdf)

 

2024年度(令和6年度)の薬価基準改定について

2024年度(令和6年度)の薬価基準改定の主な目的は下記です。

  • 新薬創出や適応外薬解消など促進加算の見直し
  • ドラッグロス・ドラッグラグの解消
  • 後発医薬品の安定供給

 

医療の現場においては、医療上必要であるにも関わらず、高額であることから処方・使用できない医薬品が多くあります。

治せる疾病や救える命を金銭の理由により救えないということは、医療の観点からどうしても避けなければならない課題です。

また、かつて治療ができなかった疾病を、長年の研究を経て開発した新薬によって治療ができるようになるケースも存在します。

しかし、新薬を開発するためには多くの研究や治験などで費用が発生します。

その為、新薬は高額になりがちであり、場合によっては患者さんが支払えない金額が発生することがあります。

既存薬においても、流行病などにより急に大量消費されてしまうと、薬が行き届かない患者さんが出てきてしまいます。

今回の薬価基準改定については、必要な薬を適正価格で、必要な量を安定供給できるようにすることが目的です。

ただし、すべての薬を値下げしてしまうと製薬会社の経営や国の税収などに大きな影響をおよぼします。

そのため、需要が低い薬を値上げすることで帳尻を合わせるようにしたのが今回の改定になります。

薬価については先述の通り、中央社会保険医療協議に基づき、下記の「市場実勢価格加重平均値調整幅方式」で算定されます。

 

2023年度(令和5年度)の薬価調査結果

2023年度の薬価調査結果

2024年度(令和6年度)の薬価基準改定を行う際には、2023年度(令和5年度)の薬価調査結果を参考にしています。

2023年度(令和5年度)も不採算医薬品の再算定が実施されており、その影響で増収・減収となる企業が発生しました。

薬価を確認する際は、市場実勢価格と薬価の差を、薬価で割ったときの割合である「乖離率」を参照します。

下記の数式で算出される乖離率は、2023年度(令和5年度)では6.0%でした。

 

  • 平均乖離率 = {(現行薬価 × 販売数量)の総和 – (実販売単価 × 販売数量)の総和} / {(現行薬価 × 販売数量)の総和}

 

平均では1桁%の乖離率の改定ですが、不採算医薬品を多く取り扱う製薬会社のなかには、20%以上改定したところがあります。

一方、採算が取れる医薬品を取り扱う製薬会社は2桁近い改定を行った企業も存在します。

このように、算定による経営の不安定さを取り除くために、薬価基準の改定は慎重に行われます。

 

今後の薬価改定の展望

今後の薬価改定については、時流や治療ができるようになった疾病などによって変動することが考えられるため、具体的にどの薬がいくら変動するのかは予想が困難です。

患者さんが多い疾病には、多くの薬が必要になるため、安定かつ低額での供給が求められます。

一方、珍しい疾病については上記の疾病ほど薬を必要としないため、価格の据え置きか値上げが考えられます。

とはいえ、あまりにも高額な値上げをすると必要とする患者さんが手を出せないような価格になってしまいます。

そのため、厚生労働省や価格に影響をおよぼす医療従事者は、さまざまな観点から適正価格を設定しています。

 

おわりに

本記事では、2024年度改定内容と2023年度の薬価改定について解説しました。

薬価とは、医療機関などから処方される薬に設けられている、「薬価基準」に記載されている医療用医薬品の価格を指します。

2024年度の薬価改定の主な目的は、新薬創出や適応外薬解消など促進加算の見直しやドラッグロス・ドラッグラグの解消、後発医薬品の安定供給です。

2023年度は薬の種類によって影響を受ける企業が多かったことから、薬価基準は慎重に検討・算定されます。

薬価基準改定が実施されたあとは、決定された薬価基準を正確に把握しておきましょう。

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MRP医療コラム編集部

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