DPC制度とは?導入目的や利点、データ活用まで解説
2024.11.20医療経営かつて日本の医療では同じ疾患や病態であっても、施設や担当医によって入院費や治療期間、医療機関にバラツキがありました。
患者さんからすると、同じサービスを受けているのに価格差が発生することに違和感を覚えるものです。
また、価格を下げることで集客をするような医療機関も増える懸念があることから、日本政府は「DPC制度」を設けました。
本記事では、DPC制度とはどのようなものなのかについて、導入目的や利点、データ活用などとあわせて解説します。
DPC制度とは?
DPC(Diagnosis Procedure Combination)制度とは、診断群の分類に基づく1日あたりの包括支払制度です。
2003年度に特定機能病院から試行的に導入されており、入院した患者さんの病気・病状、診療内容をもとに医療費を計算します。
従来は診療行為ごとに料金を計算する出来高方式であり、医療サービスの価格にバラツキがあったため、当制度が設けられました。
DPC制度導入の目的
DPC制度が導入された目的のひとつとして、医療費の適正化が挙げられます。
先述の通り、かつては疾患や病態が同じでも、医療機関や担当医によって医療費にバラツキがありました。
この問題を解決するため、カルテやレセプトデータを分析し、治療内容や医療費などから診療報酬に反映するようにしたのです。
DPC制度を導入するメリット・デメリット
こちらでは、DPC制度を導入するメリットとデメリットを、患者さんと病院に分けてご紹介します。
患者さん側
患者さんが得られるメリットは、別の医療機関で医療サービスを受けても、同じ金額を支払えるようになる点が挙げられます。
出来高算定方式とは異なり、1日あたりの定額制であることから、薬の量が増えても医療費は変動しません。
一方、出来高算定方式ではなく定額になることから、過小診療になる可能性がある点には注意が必要です。
十分な療養ができなくなると、治療が不十分なまま退院しなければならないことがある点はデメリットといえるでしょう。
病院側
病院側からすると、患者さんに提供する医療サービスの質を一定に保てる点がメリットになります。
また、DPC制度によって病院側の診療報酬が多くなる可能性がある点も、メリットに含まれます。
一方、定額であることから、入院が長引いてしまうと、収益性が下がってしまう可能性があります。
最悪の場合、病床の稼働率が下がってしまうと閉院してしまう可能性もあるのです。
DPC制度の対象となる病院
下記は、DPC制度の対象となる一般病棟です。
- A100 一般病棟入院基本料
- A104 特定機能病院入院基本料
- A105 専門病院入院基本料
- A300 救命救急入院料
- A301 特定集中治療室管理料
- A301-2 ハイケアユニット入院医療管理料
- A301-3 脳卒中ケアユニット入院医療管理料
- A301-4 小児特定集中治療室管理料
- A302 新生児特定集中治療室管理料
- A302-2 新生児特定集中治療室重症児対応体制強化管理料
- A303 総合周産期特定集中治療室管理料
- A303-2 新生児治療回復室入院医療管理料
- A305 一類感染症患者入院医療管理料
- A307 小児入院医療管理料
なお、DPC対象病院は、下記すべての基準を満たさなければなりません。
急性期一般入院基本料、特定機能病院等の7対1・10対1入院基本料の届出
- A207 診療録管理体制加算の届出
- 以下の調査に適切に参加
- 当該病院を退院した患者の病態や実施した医療行為の内容等について毎年実施される調査「退院患者調査」
- 中央社会保険医療協議会の要請に基づき、退院患者調査を補完することを目的として随時実施される調査「特別調査」
- 調査期間1月あたりのデータ病床比が875以上
- 調査期間1月あたりのデータ数が90以上
- 適切なデータ作成に係る以下の基準を満たす
- 「退院患者調査」の様式1(医療資源病名)における「部位不明・詳細不明コード」の使用割合が10%未満
- 「退院患者調査」の様式間で記載矛盾のあるデータが1%未満
- 「退院患者調査」の様式1における未コード化傷病名の使用割合が2%未満
- 適切なコーディングに関する委員会を年4回以上開催
また、下記は対象となる項目になります。
- 入院料
- 検査
- 画像診断 画像診断管理加算、動脈造影カテーテル法
- リハビリテーション、精神科専門療法
- 手術・麻酔・放射線治療
- 病理診断
- 薬剤料
- 処置
参考ページ:厚生労働省ホームページ「令和6年度診療報酬改定の概要」
(https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001221678.pdf)
DPCデータの活用とその可能性
DPCデータにはさまざまな情報が含まれていることから、下記のような活用が期待できます。
- 営業リストの作成
- 病院の経営状況を知る
- 近隣の病院と自院の状況を比較する
現状、データを提出し、診療報酬を算定するためだけにDPCデータを作成している病院が多数あります。
しかし、DPCデータを分析することで、これまで見えていなかった情報が見えるようになることが期待できます。
おわりに
本記事では、DPC制度やDPCデータについて解説しました。
DPC制度とは、診断群の分類に基づく1日あたりの包括支払制度です。
医療費の適正化や、サービスの質を一定にできるといったことが目的になります。
病院側はDPCデータを経営に活かせるように、分析をしてみることをおすすめします。
MRP医療コラム編集部
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