【医師・医療従事者向け】2024年施行の医師の働き方改革を解説

2024.10.08医療経営

医師の働き方改革

現在日本では高齢者の増加により、就労者の減少が社会問題として取り上げられています。

特に、「2025年問題」や「2040年問題」といった問題は、医療業界に大きな影響を及ぼす可能性が高いものです。

そのため、医療業界でも質を向上させつつ負担を軽減することを目的とした「働き方改革」が求められています。

本記事では、2024年施行の医師の働き方改革について解説します。

 

医師の働き方改革とは

医師の働き方改革とは、医師の健康確保と長時間労働の改善を目的とした法改正を指します。

医師を含めて医療従事者は、限られた人員で増加し続ける患者さんに対応しなければならず、過酷な労働を行っています。

そのため、医療業界では長時間労働を要求されることが多く、医療従事者の健康を確保できないことがあります。

医師の働き方改革を通して、良質かつ適切な医療を、効率良く提供できるような体制を確保することが重要です。

こちらの法改正は2024年4月から実施されており、医療業界以外には建設業や自動車を運転する業界も含まれています。

 

医師の働き方改革で何が変わる?

医師の働き方改革のポイント

こちらでは、医師の働き方改革で変わったポイントをご紹介します。

 

時間外労働時間の上限規制

一般的な業種では労働基準法により、法定労働時間が1日8時間・1週間で40時間と定められています。

医師の場合、勤務時間と休憩時間があいまいだったり、勤務管理そのものができていなかったりすることが多かったのです。

そのため、今回の法改正で医師の時間外労働時間については下記のように設けられました。

医療機関に適用する水準 年の上限時間 面接指導 休息時間の確保
A(一般労働者と同程度) 960時間 義務 努力義務
連携B(医師を派遣する病院) 1,860時間

※2035年度末を目標に終了

義務
B(救急医療等)
C-1(臨床・専門研修) 1,860時間
C-2(高度技能の修得研修)

 

追加的健康確保措置

先述の通り、医師は過酷な環境で勤務を実施していることから、休む暇がなく体調を崩してしまうことがあります。

医師の健康を確保することを目的として、今回の法改正で勤務時間のインターバルが定められました。

下記、インターバルの一例です。

  • 日勤で午前8時から午後11時までの勤務 :9時間以上の休息が必要
  • 日勤・当直・午前勤で午前8時から翌日午後0時までの勤務 :18時間以上の休息が必要

 

急患などどうしても働かなければならない場合は代償休暇が付与されます。

こちらの法改正により、医師はこれまで以上に休みやすくなったといえるでしょう。

 

時間外労働の割増賃金率引き上げ

医師は過剰な時間外労働を行っても、残業代が支払われないことが多いといわれています。

今回の法改正により、月60時間を超える法定時間外労働に対して雇用者は、50%以上の割増賃金率の支払いが命じられました。

しかし、これらを超えて残業をした場合、労働基準法第141条により6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられます。

残業代の発生や法の抵触を避けるために、経営者や医師は最適な労働を求められるようになることが期待できます。

 

医師の働き方改革の課題

一方、医師の働き方改革では、下記のようなポイントが課題として挙げられます。

  • 勤務時間の明確な記録の有無
  • 患者優先による業務過多
  • 人手不足

 

医師には宿直や日勤などさまざまな勤務形態があるため、明確に何時から何時まで働いたという線引きが難しい傾向にあります。

高齢な医師の場合、紙媒体で管理していることが多い点も、勤務時間を把握しにくい要因といえるでしょう。

また、働き方改革が発令されたとしても、どうしても患者さん優先の業務形態になります。

そのため、急を要する場合は時間外であっても対応を迫られることがあるものです。

多くの病院では医師や看護師といった医療従事者が少なく、人手不足を深刻な課題として挙げています。

人手が少ない理由は、先述した時間外労働の多さや業務過多のほか、それに見合った給与を得られないことが含まれます。

今回の働き方改革によってこれらの問題が解決し、多くの人手を確保することも目的となります。

 

医師の働き方改革に向けた医療機関の取り組み

働き方改革に向けての取り組み

医療機関においては、働き方改革に向けてさまざまな取り組みを行う必要があります。

たとえば、労働時間や実施するべきコア業務への集中など、労働管理の方法を見直すことが挙げられます。

労働時間の管理システムを導入したり、残業申請を明確にしたりといったことが含まれています。

また、スタッフ間でコア業務に集中するために、クラークの導入やチーム制を採用することも重要です。

このように、働き方改革を実現するために、医療の現場ではさまざまな施策を行う必要があるといえます。

 

おわりに

本記事では、2024年施行の医師の働き方改革について解説しました。

医師の働き方改革は、医師の健康確保と長時間労働の改善を目的とした法改正を指します。

今回の法改正では就労時間の明確化や次の勤務までのインターバルが設置されました。

課題としては勤務時間の明確な記録の有無や患者優先による業務過多、人手不足などが挙げられます。

コア業務に集中し、質が高い医療を勤務時間内で実施できるよう、現状の体制を見直してみましょう。

資料のご請求はこちらから

The following two tabs change content below.
MRP

MRP医療コラム編集部

病院経営改善・コスト削減コンサルティングの株式会社エム・アール・ピーが発信する「MRP医療コラム」です。医療経営に関する様々なお役立ち情報を発信します。