病院経営改善の一歩|医療材料の価格交渉における適正価格把握の重要性
2025.10.27医療経営
医療材料の価格上昇が続く中、病院経営ではコスト構造の見直しが急務となっています。
とくに材料費は病院全体の支出に占める割合が高く、価格交渉の成果が経営改善にも直結します。
しかし、適正価格を把握せずに交渉を行うと、十分な削減効果を得られないことに加えて、取引先との持続的な関係性に影響が及ぶ可能性もあります。
本記事では、病院経営改善の一歩として、医療材料の価格交渉における適正価格把握の重要性について解説します。
価格交渉の前に適正価格を知る必要がある
医療材料の価格交渉を効果的に進めるためには、まず自院が購入している価格が市場と比べて適正かどうかを把握することが重要です。
同一製品であっても、取引先や数量、地域によって価格が異なるケースは多く、情報の非対称性が交渉力の差につながります。
そのため、購買履歴や契約データを分析し、他施設との比較を行うことで、交渉の基準となる価格を明確にする必要があります。
データに基づく交渉は取引先との信頼を維持しながらも、病院としての購買判断を合理化するうえで有効です。
適正価格の把握こそが、持続的なコスト削減と経営改善の第一歩といえるでしょう。
当社エム・アール・ピーでは、自施設の立ち位置を把握し、医療材料、医薬品、検査試薬、機器・保守分野のベンチマークをオールインワンで提供できるシステムをご用意しております。
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登録されているマスタについては、特別なソフトを必要とせず随時更新されます。
参考ページ:当社サービスページ「MRPベンチマークシステム」
(https://www.mrp-spd.co.jp/home/service/benchmark.html)
医療材料コスト見直しの背景と目的

医療材料費は、病院経営において人件費に次ぐ大きな支出項目です。
近年は、原材料費や輸送コストの上昇に加え、円安の影響もあり、調達コストの増大が深刻化しています。
一方で、診療報酬は抑制傾向が続き、収益とのバランスを取ることが難しくなっています。
そのため、多くの医療機関が経営改善の一環として、医療材料のコスト構造を見直す動きを強めています。
見直しの目的は単なる経費削減ではなく、医療の質を維持しながら、病院運営の持続可能性を高めることにあります。
SPD(Supply Processing and Distribution)や共同調達を活用した最適化が、その有効な手段のひとつとして注目されています。
コストの見直し方法

医療材料コストを適正化するためには、単なる価格引き下げ交渉だけではなく、病院全体の仕組みを見直すことも重要です。
こちらでは、調達・在庫・標準化・組織体制の4つの観点から、効果的なコストの見直し方法をご紹介します。
調達戦略と価格条件
価格交渉を行う際は、単価だけでなく支払条件、納期、発注単位など、取引全体の条件を含めた総合的な見直しが必要です。
他施設の購買情報を参考に、市場水準を把握したうえで交渉に臨むことで、より透明性の高い取引が実現します。
また、複数ベンダーとの比較検討を継続的に行うことで、価格の適正化と安定供給を両立させることが可能です。
在庫・物品管理
在庫の過剰や欠品は、医療材料コストに大きく影響します。
在庫が過剰にある状態は不要なコストが発生しており、欠品が発生した場合は適切な医療提供が困難になるため、適正在庫の理解・確保が重要です。
SPDや物品管理システムを活用し、使用量をリアルタイムで可視化することで、必要な分のみを的確に発注できる仕組みを構築します。
さらに、棚卸データをもとに購買数量を見直すことで、交渉時の裏付け資料としても活用できます。
在庫の最適化は、スペース効率の改善や廃棄ロス削減にも寄与します。
標準化・代替材料・共通品目の導入
医療現場では、同一用途でも異なるメーカーや規格の製品が混在している場合があります。
メーカーやベンダーを整理し、共通品目や代替材料を採用することで、購買量を集約し交渉力を高めることができます。
標準化は物流や検品の効率化にもつながり、業務負担の軽減とコスト削減を同時に実現します。
また、代替材料の検討は、供給リスクの分散にも効果的です。
組織体制・現場巻き込み・意識改革
価格交渉やコスト見直しは、購買担当だけで完結するものではありません。
現場の医師・看護師・技師など、実際に使用する職員の理解と協力が欠かせません。
使用実態を把握し、「なぜこの材料が必要か」を共有することで、合意形成が進み、現場との摩擦を最小限に抑えられます。
さらに、全職員がコスト意識を持つことで、無駄のない運用と継続的な経営改善につながります。
おわりに
本記事では、医療材料の価格交渉における適正価格の把握と、コスト見直しの重要性について解説しました。
医療機関が持続的に経営を維持するためには、データに基づく分析と、現場を巻き込んだ改善体制の構築が欠かせません。
ベンチマークデータや物品管理システムなどの活用によって、調達から在庫管理までを可視化し、戦略的なコスト削減を実現することが可能です。
医療の質を守りながら経営効率を高める取り組みが、今後の病院経営の鍵となるでしょう。
MRP医療コラム編集部
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