【医師・医療従事者向け】流通改善ガイドラインについて解説
2024.10.10医療経営医療機関が患者さんに対して最適な医療を提供するためには、医療従事者の技術だけではなく、最適な医療機器や医療用品が必要です。
必要なときに必要なものがなければ救える命を救えないことがあるため、例えば医薬品に関しても常に最適な数量の在庫を用意しておかなければなりません。
不足している場合は業者に発注して納品してもらう必要がありますが、医薬品の流通にはさまざまな課題がありました。
本記事では、医薬品の流通改善ガイドラインについて、改定内容や留意事項などとあわせて解説します。
流通改善ガイドラインとは?
流通改善ガイドライン(正式名称:医療用医薬品の流通改善に向けて流通関係者が遵守すべきガイドライン)とは、2018年に厚生労働省が作成したガイドラインです。
こちらのガイドラインでは、医薬品の流通改善における課題である下記を解決することを目的として作成されました。
- 未妥結・仮納入の改善
- 単品単価取引の推進
- 一次売差マイナスの解消
- 医薬品のトレサビリティ―(流通管理)・・etc
流通改善ガイドラインのあり方・目的
厚生労働省によって、流通改善ガイドラインのあり方・目的は下記であると明言されています。
- 過度な薬価差が生まれる構造から脱却するとともに、透明な市場実勢価の形成に努めることにより、薬価調査における適切な市場実勢価を把握する
- 流通関係者の経営実態に配慮しつつ、将来にわたる流通機能の安定性、流通経費等の負担の公平性を確保する
対象となる関係者はメーカー・卸売業者・医療機関・薬局です。
医療業界では、メーカー→卸売業者→医療機関・薬局の順に医薬品が流通して、患者さんの手元に届けられます。
納入価格については関係者間で協議したうえで決定しますが、医薬品の価値は時代とともに変化します。
先述した流れのなかで、のちに与える影響が最も大きいポイントはメーカー→卸売業者になります。
卸売業者はメーカーからの仕入れ価格を考慮して医療機関や薬局への販売価格を決定します。
そのため、メーカーからの納入価格が高くなるほど、自社が確保する利益を考慮すると販売価格が高くなります。
卸売業者の立場で見たときに、メーカーからの仕入れ価格と医療機関への販売価格との差分を「一次売差」といいます。
メーカーは購入金額や関係値などによって卸売業者ごとに価格を決定するため、卸売業者ごとに一次売差が異なるのですが、現在は販売価格が仕入価格を下回る、いわゆる「一次売差マイナス」の状態が続いているのです。
そのため、メーカーから卸売業者に割り戻しをすることで補填する状況が続いており、透明な市場実勢価の形成を阻害している要因の一つであるともいえます。
流通改善ガイドラインでは、一次売差マイナスの解消や単品単価交渉に基づく単品単価契約の推進など、いわゆる川上取引・川下取引の双方の改善を目的として運用されています。
参考ページ:厚生労働省ホームページ「医療用医薬品の流通改善に向けて流通関係者が遵守すべきガイドライン」の改訂について
(https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000861022.pdf)
流通改善ガイドラインの改定内容
流通改善ガイドラインでは、下記の改定が行われました。
卸売業者と保険医療機関・保険薬局との関係において留意する事項
- 流通当事者間で共通して留意する事項
- 流通の効率化と安全性・安定供給の確保
- 厚生労働省への相談
- その他
関係者間の関係値による価格変動を抑えることで、適正価格による取引を行うことが目的となります。
これらが実行されることにより、安定供給と交渉時間削減に貢献します。
また、卸価格に関する事項に加え、返品に関する留意事項も定められました。
有効期限を超過していたり、開封されていたりする医薬品の返品は慎むように記載されています。
流通時のトラブルを避けるために、保険医療機関・保険薬局に対して丁寧に情報提供を行うことも含まれます。
これらは厚生労働省が管理するものであることから、トラブルが発生したときは厚生労働省に相談しましょう。
参考ページ:厚生労働省ホームページ「医療用医薬品の流通改善に向けて流通関係者が遵守すべきガイドライン」改訂案の概要
(https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/PcmFileDownload?seqNo=0000266929)
おわりに
本記事では、医薬品の流通改善ガイドラインについて解説しました。
流通改善ガイドラインとは、2018年に厚生労働省が下記を解決することを目的として作成したガイドラインです。
- 未妥結・仮納入の改善
- 単品単価取引の推進
- 一次売差マイナスの解消
当ガイドラインが適用されることにより、メーカーや卸売業者、医療機関・薬局の間における取引の透明化、しいては国民医療費の軽減にも寄与することでしょう。
医療機関や薬局の目的は患者さんの治癒であり、関係値や価格などによってそれらに影響を及ぼしてはなりません。
流通改善ガイドラインに則り、最適なビジネスを実施して患者さんに最適な医療を提供しましょう。
MRP医療コラム編集部
最新記事 by MRP医療コラム編集部 (全て見る)
- DPC制度とは?導入目的や利点、データ活用まで解説 - 2024年11月20日
- 長期収載品の選定療養の基本|対象品目や計算方法をわかりやすく解説 - 2024年11月20日
- 電子処方箋の義務化はいつから?目的や仕組み、導入状況を解説 - 2024年10月10日