介護報酬とは?計算方法と2024年改定ポイントを解説

2025.03.05医療経営

介護報酬とは

病気やケガを負ってしまった場合、症状の悪化を防ぐために病院や診療所といった医療機関を受診することになります。

医療機関は質の高い医療サービスを提供し、その対価として医療費を収益として得ています。

介護についても同様であり、介護サービスを提供することで、利用者から得た報酬が収益となります。

また、事業者は利用者から得る報酬だけではなく、市町村に申請することで「介護報酬」を受け取ることができます。

本記事では、介護報酬とはどのようなものなのかについて、計算方法や2024年改定ポイントとあわせて解説します。

 

介護報酬とは?

介護報酬とは、介護サービスを提供する事業者に対して支払われる報酬のことです。

日本では介護保険制度のもとで、介護が必要な高齢者等に対してさまざまなサービスが提供されています。

介護報酬は介護保険の「介護給付費」として、全国一律で設定されており、厚生労働省が定める基準に基づいて計算します。

報酬額はサービス内容や提供時間に応じて異なるため、事業者は正確に計算を行い、適切な報酬を得る必要があります。

 

介護報酬の仕組みと役割

介護報酬は、介護サービスを提供する医療機関や介護施設、事業所が利用者に対してサービスを提供した際、対価として支払われる報酬です。利用者は原則として基準額の1割を負担し、残り9割は市町村が負担することになります。

そこで、正確な報酬額を市町村に請求し、認定を得ることで、介護報酬を得られるのです。

利用者の費用負担を減らしつつ、事業者に質の高い介護サービスを提供して経営を続けてもらうために、介護報酬制度が導入されました。

 

介護報酬の計算方法

介護報酬の計算方法

介護報酬はサービスごとに決められた単位を基準に、1単位10円で算出します。

下記は、事業者に支払われる介護報酬の計算方法です。

  • 事業者に支払われる介護報酬 = サービスごとに算定した単位数 × 1単位の単価

 

しかし、この条件を全国で統一してしまうと地域によって不平等が生じてしまいます。

そこで、独立行政法人 福祉医療機構では、地域差を埋めるために下記のような地域に区分しました。

ここに記載されている%は上乗せ割合で、等級の数値が低いほど上乗せ割合が高くなります。

1級地 2級地 3級地 4級地 5級地 6級地 7級地 その他
20% 16% 15% 12% 10% 6% 3% 0%

 

サービスによる人件費率の変動

また、介護サービスにおいては、下記のように提供する内容によって人件費率が変動します。

人件費率 該当するサービス
70%
  • 居宅介護支援
  • 訪問介護
  • 訪問入浴介護
  • 訪問看護
  • 定期巡回・随時対応型訪問介護看護
  • 夜間対応型訪問介護
55%
  • 小規模多機能型居宅介護
  • 看護小規模多機能型居宅介護
  • 通所リハビリテーション
  • 訪問リハビリテーション
  • 認知症対応型通所介護
  • 短期入所生活介護
45%
  • 通所介護
  • 短期入所療養介護
  • 介護老人福祉施設
  • 介護老人保健施設
  • 特定施設入居者生活介護
  • 介護療養型医療施設
  • 認知症対応型共同生活介護
  • 地域密着型介護老人福祉施設入居者生活介護
  • 地域密着型特定施設入居者生活介護
  • 地域密着型通所介護
  • 介護医療院

 

たとえば、介護サービスのなかには利用者が来院するだけではなく、訪問サービスも含まれます。

訪問サービスの場合、拘束時間が長くなりがちであることから、どうしても人件費の割合が大きくなってしまいます。

このように、サービスによる差を埋めるために、介護報酬ではサービスごとに人件費を設定しました。

2024年介護報酬改定のポイント

2024年介護報酬改定のポイント

介護報酬は3年ごとに改定され、その都度介護事業者には新たな対応が求められます。

2024年の介護報酬改定では、以下のポイントが注目されています。

 

地域包括ケアシステムの深化・推進

利用者に安全かつ質の高いサービスを提供するために、業務継続計画策定や高齢者の虐待防止措置が取られました。

求められる条件を満たしていなかった場合、施設に対して報酬の減額などの措置が取られるようになります。

また、リハビリテーション・口腔・栄養などのケアを一体的に提供するための取り組みなども改定に含まれます。

 

自立支援・重度化防止に向けた対応

介護の目的は利用者の生活をサポートしたり、現状よりも悪化させないようにしたりといったことが含まれます。

これらの目的を達成するために、リハビリテーション・口腔・栄養などのケアを一体的に提供する取り組みが進められています。

先述した取り組みを導入・実施することで、追加の介護報酬を得ることができます。

 

良質な介護サービスの効率的な提供に向けた働きやすい職場づくり

良質な介護サービスを提供するためにはスタッフが働きやすい職場づくりが不可欠です。

基本給アップや、見守り機器などのテクノロジーを導入した生産性向上などが本改訂に含まれます。

従来よりも働きやすく、待遇も改善されることで、スタッフはモチベーションを高く維持した状態でサービスを提供しやすくなるでしょう。

 

制度の安定性・持続可能性の確保

当制度は単発で完了するものではなく、継続して実施することではじめて大きな影響をおよぼします。

制度を安全かつ持続的に運用するために、訪問回数および巡回・訪問介護の新たな報酬区分を設定しました。

介護サービスの適正化と重点化を進めることで安定性を高め、持続可能な体制を確保することが本施策の目的となります。

 

おわりに

本記事では、介護報酬とはどのようなものなのかについて解説しました。

介護報酬とは、介護サービスを提供する事業者や医療機関に対して支払われる報酬のことです。

利用者の費用負担を減らしつつ、事業者に質の高い介護サービスを提供して経営を続けてもらうために、介護報酬制度が導入されました。

3年ごとに改定が行われ、2024年度の改定では下記の内容で公表されています。

  • 地域包括ケアシステムの深化・推進
  • 自立支援・重度化防止に向けた対応
  • 良質な介護サービスの効率的な提供に向けた働きやすい職場づくり
  • 制度の安定性・持続可能性の確保

 

質の高いサービスを提供しつつ、正確な報酬を算定することで長期的に健全な経営体制を確立していきましょう。

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MRP医療コラム編集部

病院経営改善・コスト削減コンサルティングの株式会社エム・アール・ピーが発信する「MRP医療コラム」です。医療経営に関する様々なお役立ち情報を発信します。