病院経営を支える材料費率の改善|要因分析と実践策を解説

2025.06.11医療経営

病院経営を支える材料費率の改善

病院経営においては、材料費は不可欠な出費ではあるものの、利益を圧迫する要因にもなります。

在庫が多すぎると材料費がかさみ利益を圧迫し、少なすぎると患者を診察・治療できなくなってしまうため、病院には適切な在庫管理が求められます。

また、仕入れ価格についても確認しておかなければなりません。

本記事では、病院経営を支える材料費率について、改善のための要因分析や実践策とあわせて解説します。

 

材料費率と病院経営との関係性

材料費率とは、病院全体の収益に対する医療材料費の割合を示す指標です。

計算式は「材料費 ÷ 収益 × 100」で、ここでの材料費は診療に使用する医療材料や消耗品を含みます。

人件費や委託費、減価償却費などとは異なり、診療行為に直結する支出です。

病院経営における費用構造を把握する上で、材料費率は重要な指標の一つといえるでしょう。

 

材料費率の重要性

過剰な材料費は利益圧迫の要因となり、経営の健全性を損ねかねません。

特にDPC(診断群分類包括評価)制度下では診療報酬が包括化されているため、材料費の管理は重要性を増しています。

また、全国平均や地域内他施設とのベンチマーク比較により、自院の費用水準の妥当性を可視化できます。

材料費率を最適化することは、病院経営の収益構造を改善し、再投資可能な財源の確保にもつながります。

 

材料費率を構成する要因と課題

材料費率を構成する要因

材料費は常に適量の材料を在庫しておくために、ゼロにすることはできません。

こちらでは、材料費を構成する要因と課題について解説します。

 

主な費用項目と構成比

材料費には、注射針やガーゼ、薬剤投与に用いる器具といった診療材料費と消耗品費が含まれます。

また、SPD(Supply Processing and Distribution)運用による委託費も間接的に材料費率へ影響を及ぼします。

DPC病院では包括支払い方式により入院収入が固定されているため、無駄な使用やロスの抑制がより求められます。

 

材料費が高騰する背景

材料費が上昇する主な原因として、在庫管理の非効率さと契約体制の見直し不足が挙げられます。

現場主導での発注や不適切な発注ロットが余剰在庫や廃棄ロスを生みます。

医療の質を保ちつつ材料費を適正に抑えるには、購買プロセスの見直しが不可欠となります。

 

経営判断を誤らないための注意点

材料費削減は重要ですが、行き過ぎたコストカットは診療の質低下にもつながりかねません。

安価な代替品への変更が患者の安全を脅かす場合があるため、経営判断には医療倫理や現場との十分な協議が必要です。

医療安全と経営効率を両立させるには、数値だけに頼らず、総合的な判断が求められます。

 

材料費率改善に向けた具体策

では、具体的にどのような施策を実施すれば材料比率を改善できるのでしょうか。

以下にて、材料費率改善に向けた具体策をご紹介します。

 

データ活用と可視化

材料費率の改善には、まず現状の「見える化」が不可欠です。

電子カルテや会計システムと連動したダッシュボードを活用することで、月次・週次単位での数値把握が可能になります。

また、KPI(重要業績評価指標)を設定し、PDCAサイクルを回すことで改善活動を継続的に実施できます。

 

部門別・診療科別の分析視点

材料費率の分析は、診療区分別や部門別に行うと効果的です。

例えば、急性期病棟と慢性期病棟では使用する材料の種類や量が大きく異なります。

診療科ごとに材料費の傾向を比較・検討することで、過剰使用やロス要因の特定が簡素化します。

 

標準化・アウトカム評価との連動

材料費の削減は、単に使用量を抑えるだけでは不十分です。

標準的な診療プロセスを整備することで、材料の選定と使用に一貫性が生まれます。

TQM(Total Quality Management)やクリニカルパス、臨床指標などと連携し、アウトカム評価を取り入れることで、コストと質の両立が実現します。

 

成功事例に学ぶ改善のヒント

成功事例に学ぶ改善のヒント

以下は、当社エム・アール・ピーが携わった、材料費率改善を実現した事例、およびそれらをもとにした改善のヒントです。

病院経営の改善には、現状の課題を正確に把握し、適切な対策を講じることが重要です。

当社のベンチマークシステムを活用した事例では、医療材料費の適正化により、年間約1億4,000万円のコスト削減を実現した病院があります。

また、業者選定の見直しにより、年間約2億3,000万円のコスト削減に成功したケースも報告されています。

これらの成果には、データに基づいた分析と戦略的な交渉が重要です。

さらに、医事請求のチェックやDPCコスト分析を通じて、請求漏れの防止やコスト管理の強化が図られています。

これらの取り組みにより、病院全体の経営効率化と持続可能な医療体制の構築を実現しやすくなるでしょう。

 

参考ページ:当社事例ページ「コンサルティング事例」

 

おわりに

本記事では、病院経営を支える材料費率について解説しました。

材料費率とは、病院全体の収益に対する医療材料費の割合を示す指標で、「材料費 ÷ 収益 × 100」で算出します。

材料費率を最適化することは、病院経営の収益構造を改善し、再投資可能な財源の確保にもつながります。

経営効率の改善に取り組む際には、材料費率を見直してみてはいかがでしょうか。

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MRP医療コラム編集部

病院経営改善・コスト削減コンサルティングの株式会社エム・アール・ピーが発信する「MRP医療コラム」です。医療経営に関する様々なお役立ち情報を発信します。