医療機器の保守点検の重要性と管理方法および経営への影響
2026.03.11医療経営
医療機関では、多様な医療機器が日常的に使用されています。
CTやMRIをはじめ、人工呼吸器や輸液ポンプなどの機器は、安全な診療を支えるために重要な設備であり、これらの機器は適切な保守点検を行うことで性能を維持し、安全性を確保することができます。
一方、点検不足は故障や不具合の原因となり、収益に影響するだけでなく医療事故にもつながるため、医療機器の保守点検は安全管理と経営の両面で必要な取り組みです。
本記事では、医療機器の保守点検の重要性と管理方法および経営への影響について解説します。
医療機器保守点検の重要性

医療機器の保守点検は、安全な医療提供を維持するために不可欠です。
機器は長期間使用されることを前提としていますが、性能は経年とともに低下します。
適切な点検を実施することで、故障や事故の予防につながります。
また、医療機器の安定稼働は診療の継続性を確保できるほか、保守点検は医療機関の経営にも影響します。
故障や不具合による診療停止は収益減少の原因となるため、計画的な点検は長期的に見ると修理費や更新費の適正化につながるともいえます。
保守点検の目的
医療機器の保守点検の目的は「安全性」と「性能」の維持です。
厚生労働省は医療機関に対し、医療機器の安全管理体制の整備を義務として定めており、医療機関は保守点検を実施し、安全管理を行う必要があります。
しかし、先述の通り医療機器は使用頻度に応じて部品の劣化が進行します。
そのため、点検により異常の早期発見ができ、修理費をはじめとしたランニングコストを最小限に抑えられる可能性があります。
参考ページ:厚生労働省ホームページ「医療機器に係る安全管理のための体制確保に係る運用上の留意点について」
経営への影響
医療機器の故障は診療停止を招き、収益減少にもつながることから、保守点検は医療機関の経営にも影響します。
突発的な修理は高額な費用を伴う場合があるため、計画的な点検は修理費の抑制にも有効です。
また、適切な保守管理は設備更新の計画策定に役立てられることから、ムダな支出の削減が可能になります。
医療機器の保守点検は、安全確保と機器性能の維持に直結し、故障の予防は診療停止の回避につながります。
結果として、保守点検は医療の安全性と経営改善の両面に寄与するといえます。
保守点検の法令と義務
医療機器の保守点検は、法令に基づき医療機関に義務付けられており、特に特定保守管理医療機器は厳格な管理が求められます。
医療機関は安全な医療提供の責任を負っているため、医療機器の安全管理体制の整備が必要です。
医療機器は生命維持に関わるものであることから、適切な保守点検は医療安全と経営の安定につながります。
こちらでは、保守点検の法令と義務についてご説明します。
医療法に基づく安全管理義務
医療法および医療法施行規則では、医療機器の安全管理体制の整備が医療機関に義務付けられており、医療機関は「医療機器安全管理責任者」を配置する必要があります。管理責任者は保守点検の実施状況を管理しなければならないほか、医療機器の安全使用に関する研修の実施も求められます。
これらの義務は医療事故の防止を目的としており、適切な管理体制の構築が求められます。
日々の最適な管理および医療従事者への教育により、常時安全な運用が可能になります。
参考ページ:厚生労働省ホームページ「医療機器に係る安全管理のための体制確保に係る運用上の留意点について」
参考ページ:法務省ホームページ「医療法施行規則」
特定保守管理医療機器の管理義務
人工呼吸器や除細動器などが該当する「特定保守管理医療機器」は、特に厳格な管理が必要です。
これらの機器は定期的な保守点検が求められることから、専門知識を持つ担当者による管理が求められます。
参考:独立行政法人 医薬品医療機器総合機構ホームページ「画像診断医療機器等の安全性と性能の維持を図る 安心・安全にご使用していただくために」
点検記録の保存と監査対応
医療機器の保守点検では、点検記録は監査や事故調査で重要な資料となるため、点検内容や実施日を明確に記載した記録の保存が必要です。
適切な記録管理は法令遵守の証明につながるほか、記録の整備は管理体制の可視化にも有効です。
公的・私的・経営管理の観点に関わらず、日々の管理を徹底するうえでも重要な取り組みといえます。
また、医療機器の保守点検は法令により義務化されており、安全管理責任者の配置と点検体制の整備が求められています。
このように、法令遵守は医療安全と医療機関の信頼維持につながっているといえます。
保守点検の種類

保守点検は大きく「日常点検」と「定期点検」に分類されます。
日常点検は医療従事者が実施する基本的な点検であり、定期点検は専門技術者による詳細な点検です。
適切な点検体制は医療事故の防止につながり、これらを組み合わせることで安全管理が実現します。
日常点検
日常点検は医療機器を使用する前後に行う基本的な点検であり、主に医療従事者が実施します。
実施内容の一例として、電源状態や外観の確認、異常音や表示異常の確認などが挙げられます。
継続的な実施により機器の状態を日々把握できることから、安全管理の基盤となる取り組みであり、故障や不具合の早期発見につながる重要な取り組みといえます。
参考ページ:一般社団法人 日本画像医療システム工業会ホームページ「医療機器の安全使用には保守点検、予防保守が必要です。」
定期点検
定期点検は専門的な保守点検であり、メーカーや専門業者が実施します。
医療従事者が実施する日常点検では確認できない内部部品の状態確認などを行います。
必要に応じて調整や部品の交換を実施することもあります。
定期点検は機器性能の維持に不可欠であり、大きな故障の予防と寿命延長につながります。
また、計画的な点検は突発的な修理の削減に有効であることから、結果としてコスト削減にもつながります。
定期点検の実施は、法令遵守の観点および特定保守管理医療機器において特に重要となります。
保守点検の課題と対策
医療機器の保守点検は安全管理に不可欠な業務である一方、多くの医療機関では管理上の課題が存在します。
近年は医療機器の増加により管理の複雑化が進んでいるほか、専門人材の不足も大きな課題です。
さらに、管理体制が不十分な場合は点検漏れの原因になることもあり、これらの課題は医療安全と経営の両面に影響します。
人材不足への対応
医療機器管理には専門知識が必要になるものの、臨床工学技士などの専門知識を有する人材が不足しています。
人材不足は安全性に影響し、点検体制の不備につながるため、対策として外部委託の活用が挙げられます。
外部の専門業者を活用することで適切な点検が可能となり、管理業務の負担軽減にもつながります。
専門知識を活用しつつ、医療従事者はコア業務に集中できるようになるため、業務効率改善が期待できます。
点検漏れの防止策
医療機器の種類や台数の増加により管理は複雑化しており、点検漏れが発生する場合があります。
点検漏れは故障や事故の原因となる重大なリスクです。
少しでもミスの発生を抑えつつ機器情報を一元管理するために、管理台帳の整備が有効な対策になります。
また、計画的な点検の実施につながるため、点検スケジュールの明確化も有効です。
管理体制の最適化
責任者や役割分担の明確化により管理効率の向上が期待できます。
管理体制の整備により、点検業務の確実な実施が可能になり、全体的な業務の効率化につながります。
さらに、管理体制の最適化はコスト削減にも寄与することから、経営改善の基盤となるといえるでしょう。
外部委託について

医療機器の保守点検は、外部の専門業者へ委託することが可能です。
専門業者は医療機器に関する技術知識と点検実績を有しており、適切な保守点検を実施していただけるでしょう。
そのため、院内の人材不足を補完しながら、安全管理体制の強化を図ることができます。
また、医療機関では医療機器の種類や台数が増加しており、すべてを院内で管理することは大きな負担にもなり得ます。
外部委託を活用することで、管理業務の効率化と担当者の負担軽減につながり、これにより院内職員は本来の業務に専念できる環境の構築がしやすくなります。
さらに、専門業者による定期的な点検は、故障の予防と機器寿命の延長にも寄与します。
突発的な修理の発生を抑制できるため、修理費の削減にもつながります。
結果として、保守点検の外部委託は安全性の向上とコスト管理の最適化の両面に有効な手段のひとつです。
ただし、外部委託を活用する際は、委託費の定期的なモニタリングは重要です。管理費や修理費の改善を図ったつもりが、逆にコスト上昇につながらないよう注意しましょう。
経営改善に活かす方法

医療機器の保守点検は、安全管理だけでなく経営改善にも活用できます。
機器の状態を正確に把握することで、計画的な修理や更新が可能になり、結果として突発的な支出を抑制し、安定した設備管理を実現できます。
また、保守点検の記録を活用することで、機器ごとの維持コストを分析することもできます。
修理頻度や部品交換の履歴を把握することで、更新時期の判断が容易になります。
これにより、過剰な設備投資を回避し、効率的な資産管理が可能となります。
さらに、管理体制の最適化は業務効率の向上にもつながります。
保守点検の計画化により、担当者の業務負担を軽減できることから、医療機器の適切な保守管理はコスト削減と経営の安定化に寄与するといえるでしょう。
おわりに
本記事では、医療機器の保守点検の重要性、管理方法および経営への影響について解説しました。
医療機器の保守点検は、安全な診療を支えるだけでなく、経営の安定にも影響する重要な業務です。
適切な保守管理を行うことで、故障の予防と修理費の抑制が可能になります。
また、保守点検の記録や管理体制の整備は、設備投資の最適化にもつながります。
外部委託や専門的な管理手法の活用により効率的な運用を実現できますが、委託費の定期的なモニタリングは重要です。
医療機器管理の最適化は、コスト削減と医療の質の維持を両立する有効な取り組みです。
計画的な保守点検の実施が、医療機関の安定した経営基盤の構築につながるため、自院の計画についても再度確認してみてはいかがでしょうか。
MRP医療コラム編集部
最新記事 by MRP医療コラム編集部 (全て見る)
- 医療機器の保守点検の重要性と管理方法および経営への影響 - 2026年3月11日
- 【要点整理】令和8年度診療報酬改定ポイントまとめ - 2026年3月2日
- 医療経営における現場の非効率の原因とは?改善策まで徹底解説 - 2026年3月2日


病院経営管理指標について| 医療経営を支える指標と活用法
病院経営を揺るがす課題をどう考える|現状から課題解決の対策を解説
DPC制度とは?導入目的や利点、データ活用まで解説
診療報酬とは?医療機関に支払われる仕組みと経営への影響を解説
地域医療がなぜ必要か?現状の課題と地域医療構想の重要性を解説
介護報酬とは?計算方法と2024年改定ポイントを解説