医療費適正化計画の変遷と今後の展望について解説

2024.10.10医療経営

医療費適正化計画の変遷

現代の日本は超高齢化社会を迎えており、2025年問題や2040年問題が懸念されています。

医療費が増大するなか、政府は「医療費適正化計画」を掲げました。

医療費適正化計画とはどのようなもので、これまでどのような取り組みを行ってきたのでしょうか。

本記事では、医療費適正化計画の変遷と今後の展望について解説します。

 

医療費適正化計画とは

医療費適正化計画とは、高齢化の進展や医療技術の進歩に伴い医療費が増加する中、持続可能な医療制度と、医療資源の効率的かつ公平な利用を目指して、政府や自治体の指針・目標・取り組みなどをまとめたものです。

実施期間は第1期(2008~2012年度)、第2期(2013~2017年度)、第3期(2018~2023年度)です。

 

医療費適正化計画の基本理念

厚生労働省は、医療費適正化計画の基本理念は国民の生活に関する質の維持及び向上と、 超高齢社会の到来への対応と定めています。

そのために目標値を掲げ、その目標値を達成するためにさまざまな施策が行われます。

 

医療費適正化に向けた目標

下記は医療費適正化計画における主な目標値です。

  • 特定健診実施率 :70%
  • 特定保健指導実施率 :45%
  • 特定保健指導対象者の減少率 :25%
  • 後発医薬品使用割合 :80%

 

参考ページ:厚生労働省ホームページ「第3期全国医療費適正化計画について(報告)」

(https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/000517333.pdf)

 

これまでの医療費適正化計画について

これまでの医療費適正化計画

こちらでは、これまでの医療費適正化計画について解説します。

 

第一期医療費適正化計画(2008~2012年度)

2012年に40歳から74歳までの対象者の 70%以上が特定健康診査を受診することを目標としていました。

結果は46.2%となっており、目標に対して開きがあったものの、施策開始の2008年から着実に上昇しています。

また、特定保健指導については45%以上の目標を掲げていましたが、実績は16.4%と、こちらも目標値に対して大きな乖離があります。

いずれも、都道府県や性別、年齢などにより実施率が異なることから、これらを解決することが課題となりました。

 

参考ページ:厚生労働省ホームページ「第一期医療費適正化計画の実績に関する評価(実績評価)」

(https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12400000-Hokenkyoku/0000190966.pdf)

 

第二期医療費適正化計画(2013~2017年度)

毎年国民医療費や後期高齢者(老人)医療費が増大しており、2017年は過去最大値となりました。

特定健康診査の実施状況は、40歳から74歳までの70%が診査を受診することが目標でしたが、実績は53.1%でした。

2012年と比べると7%程度数値が改善されていますが、それでも目標値との乖離があります。

特定保健指導は、目標値が45%に対して実績が19.5%と、改善は見られたものの目標値には至りませんでした。

 

参考ページ:厚生労働省ホームページ「第2期医療費適正化計画の実績に関する評価(実績評価)」

(https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/000501253.pdf)

 

第三期医療費適正化計画(2018~2023年度)

当期間の目標は、特定健診実施率70%、特定保健指導45%と第二期までと変わらず、2024年7月時点で実績は発表されていません。

医療費負担は大きくなる一方であり、近年では賃金の伸び幅よりも負担の伸び幅のほうが大きくなっています。

当期間では糖尿病の重症化予防、後発医薬品の使用促進、医薬品の適正使用が目標に盛り込まれている点が特徴です。

2024年3月に当期間が終了したばかりであり、結果はこれから発表される予定です。

 

参考ページ:厚生労働省ホームページ「医療費適正化基本方針の改正・医療費適正化計画について」

(https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12400000-Hokenkyoku/0000190972.pdf)

 

第四期医療費適正化計画(2024~2029年度)

2024年4月以降は第四期医療費適正化計画が進行しており、この期間から施策に大きな変更が加えられました。

下記は第四期医療費適正化計画における変更点です。

 

既存目標の見直し

特定健診や保健指導については、アウトカム評価の導入やICTの活用などが盛り込まれました。

医療の効率的な提供については、重複投薬・多剤投与の適正化、後発医薬品の使用促進が盛り込まれました。

 

新たな目標の設定

今回の計画では、下記のような新たな目標が設定されました。

  • 複合的なニーズを有する高齢者に対する、医療・介護の効果的・効率的な提供等
  • 医療資源の効果的・効率的な活用

 

医師・医療従事者が理解しておきたいこと

医療従事者が理解しておきたい

医師・医療従事者は、国や都道府県の取り組みを理解し、自院が地域に対してどのような役割を担うのかを理解することが重要です。

たとえば、入院医療費の定期成果は都道府県の医療計画に基づいています。

また、今後は高齢者の保健事業と介護事業が一体的に実施されることが想定されます。

経営者は日頃から積極的な情報収集を行い、発表された内容によってスタッフの人員配置などを考える必要があります。

 

おわりに

本記事では、医療費適正化計画の変遷と今後の展望について解説しました。

医療費適正化計画とは、高齢化の進展や医療技術の進歩に伴い医療費が増加する中、持続可能な医療制度と、医療資源の効率的かつ公平な利用を目指して、政府や自治体の指針・目標・取り組みなどをまとめたものです。

医療費適正化計画の基本理念は国民の生活に関する質の維持及び向上と、 超高齢社会の到来への対応になります。

これまで第一期から第三期が実施されており、2024年以降は第四期を実行しています。

経営者は、日頃から積極的に情報収集を行いましょう。

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MRP医療コラム編集部

病院経営改善・コスト削減コンサルティングの株式会社エム・アール・ピーが発信する「MRP医療コラム」です。医療経営に関する様々なお役立ち情報を発信します。