医事請求漏れが病院経営に与える影響とは?原因と改善の考え方

2026.01.20医療経営

診療報酬の請求ミス

病院やクリニックでは、診療後に患者から窓口で診療代を受け取るほか、審査支払機関を通して保険者に診療報酬を請求することで収入を得ています。

審査支払機関ではあらかじめ決められている診療行為ごとの点数を参照して、正しい情報が記載されているのかを審査・判断します。

そのため、診療報酬の情報が間違えていた場合、やり直しを命じられたり支払ってもらえなかったりするリスクがあるのです。

本記事では、診療報酬の請求ミスや算定漏れを防ぐ方法について、要因や改善策とあわせて解説します。

医事請求漏れについて医事請求漏れについて

医事請求漏れは、病院経営に直接影響する重要な課題です。

まずは定義と特徴を整理し、その後に経営面での影響や発生背景を確認します。

 

医事請求漏れの定義と基本的な考え方

医事請求漏れとは、本来算定できる診療報酬を請求できていない状態を指します。

医療機関では日常的に多くの診療情報を扱っており、そのなかで入力ミスや確認不足が発生すると、算定漏れにつながります。

診療行為は実施されているものの、レセプト請求に反映されていないため、正しい報酬を得られていない状態です。

 

医事請求漏れが経営に与える影響

医事請求漏れは目視確認や個人の判断だけでは気づきにくいものですが、同様の漏れが継続すると、年間収益に大きな影響をおよぼします。

診療報酬は積み上げ型の収益構造であることから、長期的に見ると膨大な損失となるのです。

小さな算定漏れの蓄積が、経営数値を圧迫する要因となるため、請求漏れを防ぐ取り組みが不可欠です。

 

経営管理の視点から見た問題点

医事請求漏れは、経営管理の観点でも課題となります。

実態より低い収益データが、経営判断に用いられる可能性があります。

その結果、正確な経営分析が難しくなったり、コスト削減や人員配置の判断を誤ったりする要因になります。

 

医事課だけでは解決できない背景

医事請求漏れは医事課だけの問題ではなく、カルテ記載の不足や業務フローの不整合が関係する場合もあります。

また、各部門のマスタが統一されていない場合や最新化されていない場合においても、誤請求が発生するリスクが高くなります。

現場と事務部門の連携不足が背景にあるケースも見られるため、医療機関全体で捉えるべき経営課題といえるでしょう。

 

医事請求漏れはどれだけ注意をしても発生する可能性が残っているものです。

レセコンなどのツール・システム活用に加えて、脱属人化に向けた業務フローや適切な統一マスタを構築することで、最大限の成果を得られるようになります。

 

医事請求・算定漏れが起こる要因とは?

結論として、医事請求・算定漏れが起こる要因はヒューマンエラーや情報連携不足であることがほとんどです。

病院をはじめとする医療機関は、以下のように患者に関する様々な情報を管理しなければなりません。

 

算定ルールの複雑化と改定対応

診療報酬制度は、定期的に改定が行われます。

算定ルールも年々複雑化しているため、改定内容の理解が十分でない場合、算定漏れが発生する可能性が高いです。

特に加算や条件付き算定は見落とされやすい傾向にあります。

情報連携が不十分だと、現場対応にばらつきが生じます。

 

レセプト請求業務の属人化

レセプト請求業務が特定のスタッフに集中すると、属人化が進みます。

業務内容が可視化されていない場合、チェック機能が働きません。

担当者不在時の対応が遅れることもあります。

結果として、算定漏れの発見が遅れる可能性があります。

 

スタッフ教育・体制の課題

医事請求業務には、継続的な教育が不可欠ではありますが、人員入替時の引継ぎ不足が原因になる場合もあります。

教育体制が整っていないと知識差が生じていき、その差が請求精度の低下につながります。

 

ほとんどの場合、これらの情報は電子化されており、各システムを連携することで効率良く入力することができます。

しかし、診療情報が誤っていたり、登録されているマスタ情報に誤りがあったりする場合は間違いが発生します。

特に、患者の診療情報をカルテに記載するときにヒューマンエラーやミスが発生しやすい傾向にあるのです。

また、診療情報の入力は正確に行われていても、そもそも登録されているマスタ情報に誤りがある場合は間違った情報で請求してしまうケースもあります。

そのため、医事請求・算定漏れを防ぐためには後述する仕組み化が重要となります。

 

医事請求・算定漏れを防ぐための改善策とポイント

医事請求・算定漏れを防ぐ

こちらでは、医事請求・算定漏れを防ぐための改善策とポイントをご紹介します。

 

対策①|業務フローの構築

業務フローとは、業務の流れをフロー図で表したものであり、業務全体を可視化するための目的で使われます。

業務効率が改善しない、ヒューマンエラーが多く発生する原因の一つとして、業務の可視化ができていないことが含まれています。

次に何をすれば良いのか、何に注意して業務に臨まなければならないのかなどが分からない場合、ミスが発生しやすくなります。

これは医療機関だけではなく企業にもいえることであり、業務フローの構築は収益を大きく左右する要素です。

医療機関においては業務フローやマニュアルを作成することで、誰でも高品質の業務を行うことができるようになります。

特に、ヒューマンエラーやミスが発生しやすい業務から業務フローやマニュアルを作成することで、業務の質を向上させることができます。

なお、業務フローやマニュアルは作成して終わりではなく、改善を繰り返すことで品質を高めることができます。

 

対策②|人材育成

医療機関には医師や看護師、事務員など様々なスタッフが在籍しており、当然ながらそれぞれで業務内容が異なります。

また、新人やベテランなど、スタッフごとに能力が異なるため、業務の進行にも影響を与えてしまいます。

医事請求・算定漏れを防ぐには、スタッフ間の能力のばらつきを抑える人材育成が重要です。人材育成の方法にはOJTや先輩からの指導だけではなく、勉強会やセミナーの参加などが挙げられます。

長所を伸ばし、短所を改善することでスタッフ全体の業務の質を向上させることができます。

人材育成の際には、教育係の方は対象となるスタッフの得意・不得意な業務や性格などを理解しておくことが重要です。

苦手なことばかりをやらせてしまうと、スタッフにストレスが蓄積されて業務の質が下がってしまうこともあります。

そのため、苦手の克服方法や指導方法などを見直して、気持ちよく業務に臨めるようにしましょう。

 

改善後の運用体制に欠かせないこと

先述の通り、改善後の運用体制には業務フローやマニュアル作成は欠かすことができません。

業務フローやマニュアルがあることで、担当者が休職・退職をしてもほかのスタッフがスムーズに業務を行うことができます。

また、人材育成には多額の費用が求められますが、業務フローやマニュアルを用意することで育成コストを抑えられます。

注意点として、マニュアルは1度作成したら完了ではなく、随時アップデートが必要になります。

ほとんどのスタッフが分かっても一部のスタッフには理解できなかったり、時流によって作業の見直しが求められたりするためです。

業務フローやマニュアル作成の際には多くの時間を要しますが、その分作業効率が改善するため、作成することをお勧めします。

経営改善につなげる医事請求管理の考え方

医事請求は、単なる請求業務ではなく、経営状況を把握するための重要な情報源です。

算定漏れを防ぐだけでなく、請求データを経営に活かす視点が求められます。

医事請求管理を経営指標として活用することで、改善の方向性が明確になります。

以下にて、経営改善につなげる医事請求管理の考え方について解説します。

 

医事請求を経営指標として活用

医事請求データは、経営分析に直結する数値であることから、診療科別や項目別に把握することで、収益構造が見えてきます。

算定漏れの傾向を分析すれば、業務上の課題も明確になります。

感覚ではなく数値で判断することが、経営改善につながります。

医事請求は、経営状況を映す指標の一つなのです。

 

継続的な改善体制の構築

医事請求管理は一度の見直しで完結させるのではなく、改善を継続する仕組みが必要です。

そのためには定期的なデータ確認と振り返りを行ったり、経営層と現場が情報を共有したりすることが欠かせません。

組織全体で改善に取り組む体制が、精度向上を支えます。

 

算定漏れが発生した場合の対処法

算定漏れが発生した場合

算定漏れが発生した場合は、迅速かつ段階的な対応が求められます。

感覚的な修正ではなく、事実確認と原因整理が必要です。

対応の流れを整理することで、再発防止につなげられます。

 

算定漏れ発覚時の初動対応

算定漏れが判明した場合、まず事実関係を整理します。

対象となる診療内容や発生時期を確認します。

影響範囲を把握し、収益への影響を見極めます。

初動対応の遅れは、損失拡大につながります。

 

原因分析の進め方

次に、算定漏れの原因を分析します。

入力ミス、情報連携ミス、算定ルール理解不足などを切り分けましょう。

属人化が影響していないかの確認も含めた、業務フローやチェック体制にも目を向けます。

 

再発防止へのつなげ方

原因が明確になったら、再発防止策を検討します。

業務手順の見直しやチェックポイントの追加、必要に応じてスタッフ教育も実施します。

改善内容を策定したあとはそこで終わりではなく、運用に反映させることが重要です。

 

エム・アール・ピーが提供する医事請求漏れの改善に向けた「医事整合・月次消費分析コンサルティング」

医事請求漏れの改善

当社では特定保険医療材料に関する医事請求チェックや、一般汎用材料も含めた月次消費分析を専門としたコンサルティングも実施しております。

多くの病院では、使用した材料と請求内容の整合性を確認したり、月間の消費量を確認したりするのに時間がかかっています。

ヒューマンエラーが発生しやすい点も、多くの時間を要してしまう原因といえるでしょう。

短時間で高精度な分析や整合を行うことで、スタッフの負担を減らすだけでなく、経営改善に向けた対策を講じることができます。

当社サービスページ:病院経営コンサルティング

 

おわりに

本記事では、診療報酬の請求ミスや算定漏れを防ぐ方法について、要因と改善策を解説しました。

ほとんどの場合、診療報酬の請求ミスや算定漏れはヒューマンエラーや情報連携不足、記載ミスなどが要因となります。

対策として、業務フローの構築や人材育成、正確なマスタ管理などが挙げられます。

運用改善のためには、業務フローやマニュアルの作成が重要です。アップデートを繰り返し、誰でもわかりやすい内容に整えていきましょう。マスタ管理についても、お困りごとがあればお気軽にお問い合わせください。

質の高い業務を各スタッフで行えるように、マニュアルや物品マスタなどを整備しておくことをお勧めします。

資料のご請求はこちらから

タグ : 業務効率化 診療報酬
The following two tabs change content below.
MRP

MRP医療コラム編集部

病院経営改善・コスト削減コンサルティングの株式会社エム・アール・ピーが発信する「MRP医療コラム」です。医療経営に関する様々なお役立ち情報を発信します。