地域医療がなぜ必要か?現状の課題と地域医療構想の重要性を解説

2024.12.24医療経営

地域医療はなぜ必要

病院や診療所をはじめとした多くの医療機関は、施設の近隣で生活を送っている住民たちの健康維持・促進を目的としています。

場合によっては遠方から足を運ぶ患者さんもいますが、ほとんどの場合は近隣にお住まいの方が診療・治療の対象になることでしょう。

しかし、自院で治療ができないケガや疾病の場合、ほかの医療機関に頼ることになります。

本記事では、地域医療の必要性について、現状の課題と地域医療構想の重要性をあわせて解説します。

 

地域医療構想の基礎知識

地域医療構想とは、厚生労働省が提唱した考え方に基づく計画であり、各地域における2025年の医療需要と病床の必要量を推計したものです。

2025年以降、団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となる、超高齢化社会が到来します。

厚生労働省の調査によると、75歳以上の人口は2030年頃をピークに減少するといわれています。

しかし、伸長率については地域によって大きな差があり、高齢者人口の減少が既に始まっている地域もあります。

現状を正しく把握し、最適な医療を患者さんに受けてもらうために、地域医療構想では下記を策定しています。

  • 2025年の医療需要
    構想区域ごとの患者数を推計
  • 2025年に目指すべき医療提供体制
    推計された医療需要をどこで受け止めるか?
    構想区域ごとの在宅医療を含めた医療機能別供給量
  • 目指すべき医療提供体制を実現するための施策

 

都道府県は地域の医療需要に関する将来推計や、報告を受けた情報を活用して医療計画に盛り込みます。

高齢化などによって今後増加する可能性がある症例や症状を推測することで、事前に備えることができるのです。

要約すると、地域医療構想は需要に対する供給を備えるための情報収集、および戦略立案のためのものといえます。

 

参考ページ:厚生労働省ホームページ「地域医療構想について」

 

なぜ地域医療構想が必要なのか?

患者さんの症状や状態

地域医療構想は、患者さんの症状や状態にあった質の高い医療サービスを、全国どこでも受けられるようにするために必要です。

2025年には後期高齢者がピークに達することから、医療と介護の需要が最大になると考えられます。

しかし、地域によって医療機関や介護施設、およびスタッフが不足していると、医療サービスを受けられない人が出てしまいます。

人口が多いエリアでは充実している一方、都心部から離れたエリアでは医療施設・スタッフが不足していることがあるのです。

また、症状によっては急を要するものや回復を待つものなどさまざまであり、とりあえずの備えでは、不十分な状態に陥ってしまうことが考えられます。

そのため、地域医療構想では高度急性期、急性期、回復期、慢性期のそれぞれで質の高い医療を受けられるように策定しています。

 

地域医療構想の実現プロセス

各都道府県では、地域医療構想を実現するために下記のプロセスを経てアクションに臨みます。

 

1.  地域医療構想調整会議の実施

地域医療構想調整会議では、下記について協議します。

  • 医療機関が担うべき病床機能
  • 病床機能報告制度による情報の共有
  • 都道府県計画に盛り込む事業
  • 地域医療構想の達成の推進

 

また、特定の課題に関する協議を継続的に実施する際は、専門部会を設置することがあります。

 

2.  地域医療構想策定後の取組

毎年度の病床機能報告制度による集計数と地域医療構想の必要病床数から、下記について検討します。

  • 構想区域内の医療機関の自主的な取組
  • 地域医療構想調整会議を活用した医療機関相互の協議
  • 地域医療介護総合確保基金の活用

 

これらを実現するために、継続したPDCAを繰り返して、改善および構想の実現を目指します。

 

地域医療促進がもたらす利点

地域医療促進がもたらす利点

地域医療促進は、医療機関やスタッフに対して下記のような恩恵をもたらします。

  • 医療機関の役割に適した、目の前の患者さんに集中できる
  • 高齢者医療や在宅医療の経験を積める
  • 異なる分野の医療機関や施設と連携ができる

 

大勢の患者さんが来院すると診察に追われてしまい、患者さんひとりにかけられる時間が限られてしまいます。

地域医療構想が実現することで複数の医療機関に分担されるため、目の前の患者さんに対して質の高い医療を提供できるのです。

高齢化の進行にともなって在宅医療が重要視されるようになったため、専門知識や経験を積むことができます。

自分が診療している患者さんが自院では治療ができないと判断した場合、近隣の医療施設に紹介します。

これらを実現するために、医療機関では不足している回復期病床中心へ転換するなど、機能転換による経営への影響を確認したりしています。

 

おわりに

本記事では、地域医療とはどのようなものなのかについて解説しました。

地域医療構想は厚生労働省が提唱している考え方であり、各地域における2025年の医療需要と病床の必要量を推計したものです。

地域格差をなくし、需要と供給に合わせて質の高い医療サービスを提供することが目的となります。

私たちの身を取り巻く医療業界では、質の高い医療サービスを提供するために国をあげてこのような政策を実行しているのです。

ぜひ周囲の医療機関との情報交換など、地域連携を意識した関係性の構築を図っていきましょう。

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MRP医療コラム編集部

病院経営改善・コスト削減コンサルティングの株式会社エム・アール・ピーが発信する「MRP医療コラム」です。医療経営に関する様々なお役立ち情報を発信します。