特定疾患療養管理料の算定要件と注意点:令和6年診療報酬改定の要点

2025.02.10医療経営

特定疾患療養管理料

病院をはじめとした医療機関を経営するうえで、診療報酬の算定は重要な要素となります。

医療行為によっても点数が異なりますが、記載内容に対して不備や誤りがあった場合、差し戻されて報酬が減額されるケースやキャッシュフローに影響を与えることもあり得ます。

また、診療報酬制度のなかにはかかりつけ医が計画的・具体的な診療・指導をしたときに算定できるものも含まれています。

本記事では、特定疾患療養管理料の算定要件と注意点について、令和6年診療報酬改定の要点とあわせて解説します。

 

特定疾患療養管理料とは?

特定疾患療養管理料とは、特定の疾患を主病とする患者について、かかりつけ医が計画的に管理したものを評価する仕組みになります。

疾患については厚生労働大臣が定めており、許可病床数が200床以上の病院においては算定できない旨が明記されています。

算定に含めるためには主病の治療計画を立案し、服薬・運動や栄養上の療養に関する管理情報を患者に伝えます。

これらの情報は電子カルテに記載する必要があり、主に慢性疾患が対象となっています。

 

特定疾患療養管理料の算定点数

下記は、情報通信機器の有無による特定疾患療養管理料の算定点数になります。

特定疾患療養管理料
情報通信機器なし 情報通信機器あり
診療所 225点 196点
病床数が100床未満の病院 147点 128点
病床数が100床以上200床未満の病院 87点 76点

 

参考ページ:厚生労働省ホームページ「平成24年度診療報酬改定について 第2章 特掲診療料」

 

特定疾患療養管理料の対象となる疾患の範囲

特定疾患療養管理料の対象となる疾患

下記は、厚生労働省が定めた特定疾患療養管理料の対象となる疾患です。

  • 結核
  • 悪性新生物
  • 甲状腺障害
  • 糖尿病
  • 高血圧性疾患
  • 虚血性心疾患
  • 不整脈
  • 心不全
  • 脳血管疾患
  • 肺気腫
  • 喘息
  • 気管支拡張症
  • 胃潰瘍
  • 十二指腸潰瘍
  • 胃炎及び十二指腸炎
  • 肝疾患
  • 慢性ウイルス性肝炎
  • アルコール性慢性肝炎等
  • その他慢性膵炎
  • 思春期早発症
  • 性染色体異常
  • アナフィラキシー
  • ギラン・バレー症候群

 

これらについては定期的に見直しが行われており、下記「2024年の診療報酬改定による変更点」にて追加・除外された疾患について解説します。

 

参考ページ:厚生労働省ホームページ「外来(その3)」

 

2024年の診療報酬改定による変更点

2024年の診療報酬改定において、下記の傷病・疾患が追加・除外されました。

 

追加

  • アナフィラキシー
  • ギラン・バレー症候群

 

除外

  • 糖尿病
  • 高血圧性疾患
  • リポタンパク代謝障害及びその他の脂血症

 

参考ページ:厚生労働省ホームページ「傷病名マスターの「特定疾患等対象区分」の更新について」

 

特定疾患療養管理料の算定要件

特定疾患療養管理料の算定要件

特定疾患療養管理料は、下記いずれかに該当する場合は算定できません。

 

対象となる疾患が主病ではない

たとえば、主病が高血圧で心不全を併発した場合、特定疾患療養管理料の条件を満たさないため算定することができません。

逆に、心不全が主病で高血圧を発症した際は特定疾患療養管理料の要件を満たすため、算定対象となります。

 

主病の治療をほかの医療機関で受けている

こちらの条件では、たとえば主病である心不全を他院で治療している際は、特定疾患療養管理料を得ることができません。

これはあくまで主病に対する療養管理や指導を行った場合に、算定できる管理料であることが要因となります。

 

主病以外の症状で受診したとき

季節性アレルギー症状や急性期症状などで受診した場合も、算定条件を満たさないため診療を受けられません。

これは上記の疾患が主病でないことが要因であり、対象となる疾患の療養管理や指導を行っていないことによります。

 

算定回数の上限を越えているとき

対象疾患に対する療養上の指導を行った場合、診療録に記録することで医療機関は月に2回まで算定できます。

3回目以降も診療・指導自体は可能ですが、算定対象とならない点には注意しましょう。

 

初診料との併用

厚生労働省により、特定疾患療養管理料の要件を満たしていても、初診料との併用はできないことが明記されています。

具体的には、初診料を算定する初診時に行った管理、または1ヶ月以内に行った管理の費用は、初診料に含まれるとされています。

 

参考ページ:厚生労働省ホームページ「第2章 特掲診療料」

 

特定疾患療養管理料の算定における注意点

これまでのご説明により、特定疾患療養管理料には対象疾患や算定条件などさまざまな要素が含まれています。

また、下記のように併算できない管理料がある点にも注意しましょう。

  • 生活習慣病管理料
  • ウイルス疾患指導料
  • 小児特定疾患カウンセリング料
  • 小児療養指導料
  • てんかん指導料
  • 難病外来指導管理料
  • 皮膚科特定疾患指導管理料
  • 慢性疼痛疾患管理料
  • 小児悪性腫瘍患者指導管理料
  • 耳鼻咽喉科特定疾患指導管理料
  • 在宅療養指導管理料
  • 心身医学療法

 

診療報酬を算定する際は、上記を含めた診療内容により、最適な管理料を算定しましょう。

 

おわりに

本記事では、特定疾患療養管理料について解説しました。

特定疾患療養管理料とは、特定の疾患を主病とする患者について、かかりつけ医が計画的に管理したものを評価する仕組みです。

診療所や病床数などにより点数が異なり、結核や悪性新生物、甲状腺障害などが対象の疾患となります。

医療機関の報酬に直結する要素ではありますが、対象となる疾患が主病かどうかだったり、主病の治療をほかの医療機関で受けている場合は算定できなかったりといった条件が設けられています。

算定条件については都度見直されるため、適時に情報収集しながら変更があればそれらに対応した報酬を請求する必要があります。

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MRP医療コラム編集部

病院経営改善・コスト削減コンサルティングの株式会社エム・アール・ピーが発信する「MRP医療コラム」です。医療経営に関する様々なお役立ち情報を発信します。