医療機器の耐用年数は?使用できる具体的な年数と注意点を解説
2025.08.27医療経営さまざまな医療機器は、スタッフの業務効率改善や患者さんの治療や各種のサービス向上を目的として導入されます。
しかし、どのような機器でも永遠に使い続けることはできず、一定期間を過ぎると機能が低下する「寿命」を迎えてしまいます。
一般的に、医療機器の耐用年数は何年で、使い続けるとどのような影響があるのでしょうか。
本記事では、医療機器の耐用年数や使用できる具体的な年数、耐用年数を過ぎた医療機器のリスク、減価償却のメリットについて解説します。
医療機器の「耐用年数」とは
耐用年数とは、医療機器など減価償却資産を使うことができる期間を指すもので、国が定めています。
多くの医療機器は高額であり、一定期間に配分して会計処理を行う「減価償却」が行われます。
費用配分することができる費用は国によって定められており、会計上は数年に分けて支払うように申告します。
医療機関において減価償却として会計処理がされるものには、医療機器だけではなく建物やソフトウェアなどが含まれます。
購入当初は購入金額分の価値があったものの、使用期間が長くなるほど価値が下がっていき、最終的には0円になります。
しかし、法定耐用年数を過ぎたからといっても、その機器が直ちに使えなくなるということはありません。
医療機器の具体的な耐用年数
医療機器の耐用年数は、国税庁によって下記のように定められています。
医療機器 | 細目 | 耐用年数 |
消毒殺菌用機器 | 4 | |
手術機器 | 5 | |
血液透析または血しょう交換用機器 | 7 | |
ハーバードタンクその他の作動部分を有する機能回復訓練機器 | 6 | |
調剤機器 | 6 | |
歯科診療用ユニット | 7 | |
光学検査機器 | ファイバースコープ | 6 |
その他のもの | 8 | |
レントゲンその他の電子装置を使用する機器 | 移動式のもの、救急医療用のもの、自動血液分析機 | 4 |
その他のもの | 6 | |
その他のもの | 陶磁器製・ガラス製のもの | 3 |
主として金属製のもの | 10 | |
その他のもの | 5 |
耐用年数と混在する言葉
医療機器には、耐用年数をはじめとした、使用期間に関するさまざまな言葉があります。
こちらでは、耐用年数と混在しやすい言葉をご紹介します。
耐用期間
耐用期間は適切な管理を行いながらも、機器の安全性を維持できなくなると考えられる期間を指します。
どのような医療機器でも、常に正常に動作するように日常点検や保守点検、メンテナンスを行う必要があります。
しかし、それでも安全性や有効性を維持できなる時期が訪れるもので、それが耐用期間といわれる期間です。
耐用寿命
耐用寿命は物理的、経済的、医療技術的といったさまざまな観点から医療機器が使用できなくなるまでの期間を指します。
長期間医療機器を使用していると、どれだけ修理しても故障強度が許容できなくなり、多くのランニングコストが必要となります。
耐用寿命を迎えた医療機器は修復ができない・多くの費用が必要となることから、新しい機器への乗り換えを検討しましょう。
使用期限
使用期限とは、適切に保管されている医療機器や医薬品の品質を維持できる期間を指します。
一般家庭では、食料品などに設けられている消費期限・賞味期限が近い意味で用いられています。
医療機関では薬品に設けられており、期限を超過したものは効果が弱くなったり身体に害をもたらしたりする可能性があります。
保証期間
保証期間とは、使用者に不備がないにも関わらず医療機器に不具合が生じた際に無償修理や交換などに応じる期間を指します。
一般的な医療機器は、保証期間は耐用期間よりも短い期間に設定している傾向にあります。
一般家庭では冷蔵庫やテレビといった家電に対して保証期間が設けられているため、なじみがある方は多いのではないでしょうか。
耐用年数が経過した医療機器を使い続けることは可能か?
結論として、耐用年数が経過した医療機器でも、適切に管理がされている場合は引き続き使い続けることができます。
しかし、突然故障したり正常に動作しなかったりすることが多くなる可能性があり、診療の妨げになることがあります。
また、メーカーの保証期間を過ぎている場合、自院負担で修理を依頼しなければならないため、修理の際に多くの出費が発生します。
耐用年数切れの医療機器を使い続けるリスク
医療機器の耐用年数が過ぎても物理的に使用可能な場合があります。
しかし、経年劣化による故障や性能低下のリスクは避けられません。
診断や治療の精度が不安定になることで、医療ミスやトラブルにつながる恐れがあります。
また、メーカーの保守対応が終了している場合は、修理や部品供給が困難となり、予期せぬ稼働停止が発生することも考えられます。
患者の安全と医療現場の信頼性を維持するためには、耐用年数を超えた機器の運用には慎重な判断が必要です。
耐用年数とコストから最適化を図る
同じ機能を搭載している医療機器のなかには、導入費用が高額なものや、初期費用が安価なものがあります。
どちらが良いかについては導入時の初期費用と耐用年数における保守費用やメンテナンス費用も含め検討するなど医療機関の判断になりますが、いずれにしても適正な価格を確りと把握したうえで選定することが極めて重要です。
医療機器を減価償却することで得られるメリット
医療機器は高額な資産であるため、購入時に全額を経費処理するのではなく、耐用年数に応じて減価償却を行います。
この処理により、年度ごとの利益と費用のバランスが取りやすくなり、経営指標が安定化します。
また、減価償却によって税務上の課税所得が抑えられ、法人税負担の軽減にもつながります。
さらに、定期的な資産評価と帳簿管理を通じて、老朽化した医療機器の買い替え計画を立てやすくなる点も利点のひとつです。
適切な減価償却は、医療機関の財務健全性を保つうえで欠かせない経営管理手法といえるでしょう。
医療機器導入ではリースという選択肢も有効
医療機器を導入する際、購入と比較してリース契約は初期費用を抑えられる有効な手段です。
一括購入に比べてキャッシュフローの安定化が図れ、最新機器への更新もしやすくなります。
また、経費処理が可能なため、税務上の負担軽減にもつながります。
ただし、リース期間終了後の対応や契約条件によっては、総コストが高くなる場合もあります。
そのため、設備投資全体のバランスを見ながら、経営戦略に即した判断が求められます。
機器の導入方法に迷う場合は、税理士や経営コンサルタントに相談することをお勧めします。
中立的な立場からのアドバイスが、最適な選択の後押しになるでしょう。
医療機器・材料費の適正な購入価格を把握してコスト削減を実現
医療機器や材料にかかる費用は、医療機関の経営に大きく影響を与える要素です。
可能な限り耐用年数におけるトータル費用を抑えて購入したいと考えているものの、自院はほかの医療機関と比べて高い・低いのかが分かりにくいでしょう。
当社では適正な購入価格を把握したり、コスト削減・共同購入の管理に利用できたりするベンチマークシステムを提供しています。
他院と比べて購入価格が高い場合、その情報をもとにメーカー・卸業者との価格交渉を行いやすくなるでしょう。
ベンチマークシステムにご興味がある方は、お気軽にご相談ください。
当社サービスページ:MRPベンチマークシステム
おわりに
本記事では、医療機器の耐用年数について使用可能な期間と注意点を解説しました。
耐用年数は財務管理上の基準であり、実際の使用可否とは異なる点に注意が必要です。
経年による性能劣化や保守対応終了など、リスクを考慮した更新判断が重要です。
また、減価償却やリース契約の活用、適正価格の把握によって経営効率の向上が図れます。
医療機器の選定や導入でお悩みの際は、専門家への相談をご検討ください。
当社サービスページ:病院経営コンサルティング

MRP医療コラム編集部

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