病院経営を強化するベンチマークの活用法と成功事例

2025.06.11医療経営

病院経営を強化するベンチマーク

独立行政法人 福祉医療機構の調査によると、令和5年度では50%以上の一般病院が赤字経営となっています。

人件費や医療材料費の増加、病床稼働率の低下など様々な要因がありますが、持続可能な病院経営を実現するには黒字化が不可欠です。

そのためには、現状における自院の経営分析だけでなく、他院や自院の過去データとの比較を行うことが重要です。

本記事では、病院経営を強化するベンチマークの活用法と成功事例について解説します。

 

経営ベンチマークとは何か?

経営ベンチマークとは、他の病院や過去の自施設のデータと比較して、自院の診療や運営状況の水準を明らかにする手法です。

医療機関における活用方法としては、外来・入院患者数、在院日数、診療単価、材料費などの項目が主に用いられます。

ベンチマークは単なる数値の比較ではなく、自院の強みと改善点を明確化し、経営戦略の最適化を目指すために活用されています。

 

導入のメリットと目的

経営ベンチマークを活用することで、以下のような効果が期待できます。

 

収益性の分析による収支バランスの改善

診療科別の収益構造を見直すことで、診療報酬の最適化が図れます。

 

業務効率の向上

在院日数や稼働率などの数値を他院と比較することで、病棟運営や人員配置の課題が明確になります。

 

患者サービスの質向上

患者満足度や紹介率の推移をベンチマークで把握することで、地域との連携やサービス提供の見直しにもつながります。

 

材料費率の適正化

他施設を含めた市場実勢価格を把握することで、自院の材料費を見直す際の指標として交渉に活用することができます。

 

経営ベンチマークの活用方法

経営ベンチマークの活用方法

こちらでは、経営ベンチマークの活用方法をご紹介します。

 

活用される主なデータ項目

以下は、経営ベンチマークで活用される主な指標です。

  • 外来・入院の患者数
  • 平均在院日数
  • 収益
  • 紹介率・逆紹介率
  • DPC(診断群分類包括評価)データ
  • 診療材料費・医薬品費・医療機器等

 

これらの指標を体系的に整理することで、自院の診療や運営の特徴を浮き彫りにすることができます。

 

ベンチマークを活かすための分析視点

例えば、整形外科と内科では患者の回転率や在院日数が異なるため、属性に応じた評価が必要になります。

地域包括ケアの観点から、紹介元医療機関や在宅支援体制との連携状況も考慮することで、地域医療への貢献度も把握できます。

また、急性期病院と慢性期施設では、診療の目的や業務プロセスも大きく異なります。

同類型の医療機関との比較を行い、バランスの取れた評価を行うことが求められます。

 

ダッシュボードでの可視化

経営指標を継続的に活用するには、視覚的に分かりやすいダッシュボードの構築が有効です。

主要なKPIを一覧化し、日常的にモニタリングすることで、現場職員の意識向上にもつながります。

可視化によって数値の変化を早期に察知し、PDCAサイクルを回すための起点とすることが可能です。

 

成果を上げたベンチマーク活用事例

当社エム・アール・ピーでは、材料費(医療材料・医薬品・試薬等)や医療機器・保守費用などの購入価格にフォーカスしたベンチマークシステムを提供しています。

全国の医療機関の購入価格を比較・分析することで、購入価格の最適化を実現できます。

以下は当社のベンチマークシステムを導入し、コスト削減を実現した事例です。

 

大幅なコスト削減

関東エリアの国公立大学病院C病院(500床以上)は、医療材料費の削減を目指し、当社のベンチマークシステムを導入。

特に循環器関連商品に焦点を当て、購入価格の分析と希望価格の設定を行い、業者との交渉を進めました。

その結果、年間約1億4,000万円のコスト削減、および購入価格の判定も「B判定(平均)~A判定(平均より安い価格帯)」の改善を実現。

 

業者選定と交渉戦略の見直し

関西エリアの民間病院G病院(500床以上)では、これまで医療材料の価格交渉が行われていませんでした。

購入価格ベンチマークを活用して現状を分析し、特に循環器関連商品に重点を置いて交渉を開始しました。

その結果、年間約2億3,000万円のコスト削減を達成し、眼科や外科関連の商品でも大きな成果を実現。

 

医事整合との連携でさらなる改善を実現

関東エリアの国公立病院D病院(300床以上500床未満)は、診療材料の適正化と経費削減を目的としていました。

購入価格ベンチマークを活用して希望価格を設定し、業者との交渉を進めるとともに、医事整合調査を実施。

その結果、年間約1,500万円のコスト削減と約700万円の算定漏れの改善を実現しました。

 

参考ページ:当社事例ページ「コンサルティング事例」

 

経営ベンチマーク導入のポイントと注意点

経営ベンチマーク導入のポイント

経営ベンチマークは、病院経営の改善を加速させる有効な手法である一方、導入には組織的な理解と準備が欠かせません。

ベンチマークおよびシステムの導入初期は、データの整備不足や担当者のスキル不足といった課題が顕在化しやすくなります。

これらを解決するには、まず電子カルテやレセプト情報の整備と統合を進め、正確なデータを取得するIT基盤の強化も重要です。

加えて、データリテラシーを備えた人材の育成と、外部パートナーとの連携も検討すべきです。

 

おわりに

本記事では、病院経営を強化するベンチマークについて解説しました。

経営ベンチマークとは、他の病院や過去の自施設のデータと比較して、自院の診療や運営状況の水準を明らかにする手法です。

最大限に活用するためには、主なデータ項目や分析視点を理解し、ダッシュボードでの可視化が重要になります。

その結果、大幅なコスト削減や業者選定・交渉戦略の見直しなどを実現できる可能性があります。

病院経営を改善する際、まずは現状の自院および他院・過去の自院データを参照し、比較してみることが重要です。

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MRP医療コラム編集部

病院経営改善・コスト削減コンサルティングの株式会社エム・アール・ピーが発信する「MRP医療コラム」です。医療経営に関する様々なお役立ち情報を発信します。